新川帆立『俺の恋バナを聞いてくれ』

新川帆立『俺の恋バナを聞いてくれ』

私の恋バナを聞いてくれ


「恋愛小説」といわれるものを、ハイティーンから20代にかけてほとんど読んでいない。現実の恋愛で忙しかったからだ。15歳から今に至るまで恋人がほとんど途切れることなく常にいた。

 恋愛体質というほど恋愛にのめり込むタイプではないのに、恋人が途切れないのには、私特有の寛容さが影響していると思う。誰かと一緒にいれば楽しいことが多いし(1人よりも2人で食べるご飯のほうが美味しい)、四六時中顔を突き合わせていればたいていの人間のことを好ましく感じてくるものなので、恋愛対象者に対するハードルが非常に低いのだと思う。相手に求める条件としては、休みの日は家でゴロゴロしているタイプであること、友人付き合いが深く狭くのタイプであること、私の仕事を応援してくれること、くらいだ。

 だからだろうか。巷で出回っている恋愛小説の「苛烈さ」や「ほろ苦さ」に全くピンとこない。少女小説のキラキラ恋愛はフィクションとして楽しいけれど、大人向けの作品は、本当に「同じ世界の話なんですかね?」という感じで、読んでもキョトンとしてしまう。

 人と人が出会い、仲良くなったり喧嘩したりしながら、深い付き合いになるというのは当たり前のことだ。人間誰しも心の中にピュアな輝きを持っていて、互いの輝きを垣間見たときに特殊な絆が結ばれる。友人でも、仕事相手でも同じようなことは起きるものだ。青春小説やお仕事小説に様々なテイストがあるのと同様、大人向けの恋愛小説だって、恋愛に対して多様な距離感・没入感の話があっていいんじゃないかな、と思いながら、自身としては初の「恋愛小説」に挑戦した。

 見えている世界を素直に書いたので、ものすごく等身大な作品になったなあと思っていた。けれども、先に読んだ方々からは「癖が強い」という感想を多くいただいて、ちょっと凹んだ。ちなみに、デビュー作『元彼の遺言状』を書いたときも、等身大の感覚で話を作っており、キャラを立てようなどとは微塵も考えていなかった(にもかかわらず、「キャラが強烈」と評されてちょっと落ち込んだ)。

 私の感性は世間からズレているのだろうか。とはいえ、私を含め「ズレた人間」も社会には一定数存在する。そういった人間を素直に書いた結果、「キャラ立ち」と言われてしまうのは少し悲しいけれども、エンタメとして楽しんでもらえれば、まあ何でもいいかなと思っている。

  


新川帆立(しんかわ・ほたて)
1991年生まれ、アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身。宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業後、弁護士として勤務。第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2021年『元彼の遺言状』でデビュー。25年『女の国会』で第38回山本周五郎賞を受賞。

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俺の恋バナを聞いてくれ

『俺の恋バナを聞いてくれ』
著/新川帆立

◎編集者コラム◎ 『いのちのカルテ 潜入心理師・月野ゆん』秋谷りんこ
吉良信吾『沈黙と爆弾』◆熱血新刊インタビュー◆