スピリチュアル探偵 第16回

スピリチュアル探偵 第14回
かつて獣医を夢見た探偵。
酔狂にも、ペット霊視を体験!?

 昔から「一寸の虫にも五分の魂」と言われます。確かに、犬や猫など生活を共にするペットたちは明らかに感情を持っていますし、彼らにも魂が宿っていると考えるのは、むしろ自然なことでしょう。

 そこで僕が目をつけたのがペット霊視です。探してみると、「あなたのペットの気持ちを霊視します」というカウンセラーが、実は一定数存在しているのです。様々なタイプの霊能者を相手にしてきた僕ですが、これはいまだ未体験のジャンル。

 かく言う僕は大の動物好きで、幼少期の将来の夢は獣医さんでした。今も猫(♀)と暮らしているので、彼女が日頃どんなことを考えているのか見通してくれるというなら、これほど興味深いことはありません。

 なんだかいつも以上に酔狂な試みですが、今回は霊能者の力を借りて、我が愛猫と意思の疎通を図りたいと思います。

〈CASE.16〉愛猫の本音に迫る!? ペットを霊視してみたら……

 しかし、いざ腰を据えてリサーチしてみると、ペット霊視を看板に掲げる人はちょこちょこ見つかるものの、コロナ対策のため、「カウンセリングはお電話にて。猫ちゃんの写真を送ってください」というスタイルが目立ちます。

 霊能者といえどもやはりコロナは怖い様子。だったら猫の気持ちよりも先に、コロナがいつ収まるのかを霊視してもらうべきな気もしますが、きっと霊能者にも得手不得手があるのでしょう。

 ただ、さすがに猫の写真をぺらっと1枚送っただけで、電話口であれこれ言われて「はいン万円」というのでは釈然としません。そもそも本物である保証もないわけですから、どんな茶番に付き合わされるかわからないのです。

 そんな理由からなかなか決心がつかず、しばらく保留すること数カ月。ところがつい最近、知人から思いがけない仲介がありました。「動物とコミュニケーションが取れる」という霊能者に心当たりがあるそうで、対面形式でカウンセリングしてくれるとのこと。

 料金は40分で2万円とぼちぼちのお値段ですが、これは行くしかないでしょう。すぐに知人経由でアポイントを確定させたところ、「あらかじめ霊視対象のペットの写真を5枚送ってください」と言われました。

 もちろん、お安い御用です。スマホのフォルダを開けば猫だらけ、というのは愛猫家あるある。むしろ、たった5枚でうちの子の可愛さがちゃんと伝わるのかどうか心配です。

 ……なんだかさっそく趣旨を履き違えている気もしますが、いざ出陣と参りましょう。

愛猫褒めちぎり作戦に思わずデレデレ

 訪れた先は関東某所のマンションの一室。看板の類いは一切なく、1階の集合ポストにはごく普通の名札がかかっています。

 部屋の前でインターホンを鳴らすと、女性の声で「どうぞー」と応答がありました。施錠されていないようなので、扉を開けて中へ。すると奥のほうから、「あがってくださいねー」と聞こえてきました。

 陽射しがよく入る明るいリビングで待っていたのは、フリルのついたちょっとガーリーなワンピースに身を包む、アラフォーくらい(たぶん)の女性でした。

「そちらにおかけください」と促されるままテーブルに着席すると、女性はお茶を持ってきて僕の前に置いてくれました。キッチンまわりの生活感からして、どうやらここは彼女の住居のようです。リビングの隣室は絨毯敷きの和室で、仏壇が置かれているのが見えます。

「――ええと、小鈴(こすず)ちゃんでしたよね。とっても可愛い子だから、連れてきてもらえばよかった」

 女性はニコニコとそう言いながら、僕の正面に腰を下ろしました。そう、うちの可愛い猫ちゃんの名は小鈴というのです。

「あ、伝わります? 見た目は普通の日本猫なんですけど、もうとにかく性格が人懐っこくて可愛いんですよ」

 思わず身を乗り出す親バカな僕を前に、先生は「うんうん」と頷きながらiPadを取り出しました。そこには事前に送っておいた小鈴の画像が表示されています。

「小鈴ちゃんはものすごく寂しがり屋みたいですね。いつもご主人のお帰りを、今か今かと待ち構えていますよ」
「そうなんですよ! 物書き稼業とはいえ、日中は取材やら打ち合わせやらで、ほぼ出ずっぱりなものですから、いつも寂しい思いをさせてしまっているんです。出張も多いですし……」

 おっと、いけない。僕は何を自らペラペラと情報を開示しているのでしょうか。危うくこのまま手のひらで転がされてしまうところでした。

「動物にも人間と同じレベルで個性があるんですよ。ただ、発声器官がないからそれをストレートに伝えることができないだけで。でも、小鈴ちゃんは猫の中ではとても感情表現の豊かな子ですね」

 おや? いつもなら先に名前やら生年月日やらを用紙に記入させられるところですが、どうやらこのままセッションに突入するようです。これはちょっと意外なパターン。

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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