みんなのレビュー >>>『きみはだれかのどうでもいい人』


すあまさん ★★★★★

人は時として、意図的に傷つけ傷つけられながら、それでも心折れてなるものかと踏ん張り、息苦しい世界をどうにか今日も生きている。
年齢も立場も異なる五人の主人公たち。
それぞれの視点で描かれるある日々の出来事は、その誰にも共感が持てそうで持てない?
あぁ、いるなぁこういう人…なんてどこか遠くを見ているつもりで読んでいたら、そうはさせるか!こっちへ来い!とお腹の奥の方をギューッと掴まれて離してもらえない。
捲るページに漂う言葉たちがどれもこれも突き刺さる。
つらい。苦しい。それなのに目が離せない。
すごい。こんな作品は初めてだ。

きみはだれかのどうでもいい人。
そう。私もだれかのどうでもいい人。
私にもどうでもいい人がいるように。
でもきっと。
きっとだれもが、だれかの大切な人だ。


たんちゃんさん ★★★★★

県税事務所で働く5人の女性の
短編連作集。
立場や年齢も性格も
バラバラなので同じ出来事なのに
全く違う出来事に見える。

最初にタイトルを見た時
もっと気楽にサラサラ
読めるのかと思ったのに
読み進めるほど
心が苦しくなった。
5人の女性、みんなそれぞれ
とても真面目な人たちなのだ。
でも、誰に対しても真面目でなくても
タイトルのように
『だれかのどうでもいい人』で
いいのだと思う。


粉奈弥生さん ★★★★

「私はこの5人の女性たちの中でだれに似ているだろう」と思いながら読み進めた。
味方に感じられた人も居た、敵のように感じられた人も居た。でも味方が正しく、敵が悪いと思うことはできなかった。

見ている光景、聞こえる音……それが同じものだったとしても、人によって受け取り方は様々だ。
淡い景色に蛍光色のような威圧感を与えられる人、小さな音に鼓膜がやぶれそうなくらい傷つけられる人。
同じものを皆が同じように感じるとは限らないと知れば、少し吸う空気が変わるのではないか。


Mikiさん ★★★★

こ、怖い!
お腹の奥の方をヤスリで擦られるような、背中に濡れたタオルを優しくそっと掛けられたような…ジワっとした不愉快感、なのに早く読みたくて進めたくて
乗換駅で駅のホームに着くのが待ちきれず、エレベーターの途中で本を開きましたが、でも何者かに足元を掬われるんじゃないかと恐ろしくなって本を閉じて後ろを振り向き…。
読み終わるまで心をかき乱され続けた原因は、5人の誰もに共感できる自分の弱さと意地悪さを、私も持っているからでしょうか。
読み終わった後に、タイトルがズンとお腹に響きます。読ませていただき、ありがとうございました。


かえでさん ★★★★

「十人十色」この言葉が合う作品でした。
それぞれが違う考え、悩みを持ってる。そんなの当たり前、だって境遇が違うんだもん。それを改めて教えてくれる一冊でした。
これは小説の世界だけではなく、現実でもありえる・起こりうる話。
同じ女性としてとても共感しながら読みました。

読んだ方にぜひこう聞きたいです。「あなたは誰のどんな部分に共感しましたか?」


まつちよさん ★★★★

今、隣にいる人には、自分はどんな風に見えているんだろう。この小説を読み終えたなら、誰もがそう思わずにはいられないはずです。とにかくそれぞれの登場人物の心の動きが生々しく書かれた一冊でした。とにかく読む価値ありです。


ゆのんさん ★★★★

お仕事小説的に楽しく読めると思いきや全く違っていた。いるいる、あるあると思いながらも読んでいて何となく居心地が悪くなっている。それぞれの女性達と自分が重なる所があるからだろう。恐ろしいのは自覚していない部分も暴かれてしまう所。女ほど厄介な生き物はいないと改めて感じた。


ふーさんさん ★★★★

県税事務所納税課で働く女たちのあれやこれや。はじめは、単なる水面下で行われる悪口の言い合いとか、嫉妬とか、優越感とか、そんなふうな話なのかしら。などと思って読み始めたが…もうひとつ奥に踏み込んだ、というか…表の皮が剥がれ、心の深く深くにある感情が隙間から顔を出した時の女たちの言葉に、鳥肌がたつほどゾッとした…!自分がかつて働いていた時の黒い感情までがよみがえり、頭を抱えてしまった…。
働くということは楽なことばかりではないだろう、人そのものに苦労したり悩んだり(勿論、助けられるなど逆もあるが)…それをこの本で久しぶりに再確認してしまったなあ。などとぼんやり考えた…。主婦の自分は登場人物の田邊・堀と同世代。私自身は今さら会社勤めすることもないが…私には娘がいるのだ…こんなところに放り出したら環のように、裕未のように、須藤さんのように、律子のように…しんどくなってしまうのか…?あんなに?
疑似体験出来るのが読書のいいところ、だと思うのだが、いやはや女として、母親として、もう少ししっかり立たないと負けてしまう…!と…思ってしまった…!何に対してだろう?世間の荒波?ニンゲンの恐さ?分からない。すっかり感情を揺さぶられてしまった作品でした。


マオさん ★★★★

主人公たちの仕事が「税金の取り立てをする県税事務所納税課」というので、読む前は堅苦しくて読みにくいのかな?と思いましたが、主人公たちの考えや思いを知ると、どんどん読み進めたくなるようなストーリーでした。

全四章あるストーリーは、一章ごとに主人公が変わるので、同じ出来事を別の主人公目線で読めるのが面白いです。
一章で知る出来事を、違う章では「あの時、この人はそんな思いだったんだ…」と知ると、もう一度さっき読んだ前章を読み返したくなりました。
そう言った点では二度目に読むとまた違った感想を持てる作品です。

伊藤朱里さんの作品は初めて読みましたが言い回し(表現)が素敵だなと思いました。
「まるで~のようだ」とか「~みたいに」とか、そんな表現の仕方があったのかと思う言い回しが魅力的だと思いました。
みさなんにもこの素敵な言い回しを見てほしいです。


ぷぴぴーな軍曹さん ★★★★

立場も違えば見方も違う。みんな自分の人生に一生懸命??
うまく行ってる様な人でも悩みはあるし葛藤もある。うまく行かない人も試行錯誤しながら頑張っている。色んな側面が見られる本です。最後は他の人なんてどうでもいいやーとなる一冊。


saosaoさん ★★★★

同じ職場で働く年齢も立場も異なる女性たち4人の視点で描かれる

失敗に落ち込む、言い過ぎてしまう、会社のルール、噂話…

「見ている景色は同じようで、まったく違う」
まさに表紙のその一言が突き刺さる

恐ろしいほどに違うのだ…

うまく生きられてる人なんて
どのくらいいるんだろうか。

一見真面目でも
仕事ができても
頭が良くても
その場でうまくやり過ごせる人も
そこから逃げる人も

みんな「きみはだれかのどうでもいい人」なんだろう。


てっすぃ~さん ★★★

脳味噌とはつくづく不思議な物体だと思う。そして、それを携え従う人間はもっと不思議な生き物だ。同じ「人」でも捉え方が違うことで、見える景色も感性もまったく違う。それは育つ環境によって形成されるのだろうか。ふとそんなことを考えた。
この作品を読み、随所で共感し、納得し、また視野が広がった。
自分はだれかのどうでもいい人であり、だれかの大事な人である。それは全員そうであるだろう。きみのことをどうでもいい人なんて思わない人もいるんだからね。そう伝えたい人のことを思いながら最後のページを読み終えました。


レビューのご投稿、ありがとうございました。


きみはだれかのどうでもいい人

 

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