◉話題作、読んで観る?◉ 第10回「億男」

◉話題作、読んで観る?◉ 第10回「憶男」

監督:大友啓史/脚本:渡部辰城 大友啓史/音楽:佐藤直紀/出演:佐藤健 高橋一生 黒木華 池田エライザ 沢尻エリカ 北村一輝 藤原竜也/配給:東宝
10月19日(金)より全国ロードショー
©2018 映画「億男」製作委員会
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http://okuotoko-movie.jp/

 お金と幸せの関係について考えさせる異色のエンターテイメント作だ。『告白』『君の名は。』などのヒット作で知られる東宝の川村元気プロデューサーの小説を、金融ドラマ『ハゲタカ』(NHK総合)でブレイクした大友啓史監督が一般市民の目線で分かりやすく映画化している。

 図書館司書の一男(佐藤健)は兄の借金3000万円を肩代わりし、妻や娘との別居生活を余儀なくされていた。そんなとき、一男は宝くじで3億円を引き当てる。突然の大金に戸惑った一男は、ベンチャー企業で成功を収めた大学時代の親友・九十九(高橋一生)に相談。ところが九十九は3億円を持って姿を消し、一男は九十九とお金の行方を探し回ることに。

 九十九の居場所を突き止めるために一男が訪ねるのは、ギャンブルマニアの百瀬(北村一輝)や怪しい金運セミナーを主宰する千住(藤原竜也)といった曲者たち。大友監督は原作以上に彼らを露悪的に描いているが、百瀬はお金とは実態のないものだと説き、千住はお金という仕組みを考え出した人間が逆にお金に支配されていると熱弁する。共感はできないものの彼らの言葉には一理あり、自分と異なる価値観の持ち主と出会うことで、一男はお金の本当の意味を学ぶことになる。

 脚本を担当したのは、「ドラゴンクエスト」シリーズなどを開発した人気ゲームクリエイターの渡部辰城氏。本作もロールプレイングゲームを思わせる物語展開となっており、自分ならこんなときどうするかと考えさせる余白のあるドラマとなっている。

 クライマックスは、モロッコで撮影された広大な砂漠で一男と九十九が対峙するシーン。空と砂漠だけが果てしなく広がる空間で、2人は一体何を見つけるのだろうか。

 男たちがお金のあるなしに一喜一憂するのに対し、黒木華、沢尻エリカ、池田エライザら女優陣はお金に関係なく、その時その場の状況を受け入れて楽しんでいるのが印象的だ。原作にはビル・ゲイツの言葉「うまくお金を使うことは、それを稼ぐのと同じくらい難しい」など偉人たちの格言が随所に盛り込まれており、お金のことをもっと知りたくなった人にお勧めの一冊となっている。

(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2018年11月号掲載〉

原作はコレ☟
◉話題作、読んで観る?◉ 第10回「憶男」
億男
川村元気/著
(文春文庫)
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