◎編集者コラム◎ 『本を守ろうとする猫の話』夏川草介
◎編集者コラム◎
『本を守ろうとする猫の話』夏川草介
2017年に刊行された夏川草介氏の『本を守ろうとする猫の話』が、刊行から五年半の歳月を経て、いよいよ文庫化されました。本書は海外でも高い評価を受け、これまでにブルガリア、ブラジル、中国、チェコ、ドイツ、デンマーク、カタロニア、スペイン、フィンランド、アメリカ、フランス、イギリス、ギリシア、クロアチア、ハンガリー、インドネシア、イタリア、韓国、ラトビア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、サウジアラビア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、タイ、トルコ、台湾・香港(繁体字)、ウクライナ、ベトナムなどで翻訳版が刊行されています。
夏木林太郎は、一介の高校生である。幼い頃に両親が離婚し、小学校に上がる頃からずっと祖父との二人暮らしだ。祖父は町の片隅で「夏木書店」という小さな古書店を営んでいる。その祖父が、突然亡くなった。面識のなかった叔母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、店の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは本を守るために林太郎の力を借りたいのだという。林太郎は、書棚の奥から本をめぐる迷宮に入り込む――。
「おじいさんは、ここですばらしい古書店を開いている。魅力ある書物をひとりでも多くの人に届けるためにな。そうすることで歪んだものが少しずつでも真っ当な姿に戻るのだという信念がある。それがすなわち、おじいさんが選んだ新しいやり方だ。華々しい道のりではないが、おじいさんらしい気概にあふれた選択ではないかね」――本文より
21世紀版『銀河鉄道の夜』とも言える本書を、ぜひお楽しみください。
──『本を守ろうとする猫の話』担当者より
『本を守ろうとする猫の話』
夏川草介