ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第118回

「ハクマン」第118回
Xは治安が悪いが、
なぜかネタバレに関しては
紳士的である

急に漫画が読めるようになったので色々と読んでいたが、今はアニメを見ている。

おそらく今一番ホットな漫画の一つである「呪術廻戦」のアニメ全話と映画、そして今更だが「進撃の巨人」のアニメをもう少しで全話見終わる。

この現象はもはや、売れている作品への嫉妬を越えて良いものを摂取する気になった、というわけではなく、死期を感じて思い残しを減らすフェーズに入ってしまったのかもしれない。

しかし進撃の巨人に関しては以前からいつか最後まで読まなければいけないと思っていた。

何故なら進撃の巨人は途中までコミックスで読んでいたからだ。
ちなみに、進撃の巨人の連載開始と、私のデビューはほとんど同時期である。

履歴書の長所欄に堂々と「大谷翔平と同年に生まれた」と書く奴みたいになっているが、私がまだ漫画家として希望があり、元気だった時に始まった、ということだ。

よって自分の単行本が発売すると、わざわざ書店に行って自分の本があるかどうか確認しに行っていた。
当然私の本は高確率でないのだが、その時すでに進撃の巨人は話題の本として大展開されていたので、興味本位で1、2巻を購入したのだ。

今思えば重度の自傷行為があるとしてベッドに拘束されてもおかしくないことをしているが、その後も私が買ったのか続きを読みたい夫が買ったのか定かでないが「9巻」ぐらいまで家で読んだと記憶している。

だがその頃には、売れている漫画を見ると血反吐を吐いて死ぬ病が進行していたため、進撃の巨人もそれ以降は読めず、完結したと風の噂で聞いた後も続きを読むことはなかった。

しかし私の中にも「結局あの巨人はなんだったんだ」という疑問は残りつづけていた。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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