◎編集者コラム◎

『無痛の子』リサ・ガードナー 訳/満園真木


『無痛の子』リサガードナー 訳/満園真木


「これほど心を揺さぶる小説も久しぶり。誘拐監禁事件ものの名作になる。必読!」「優れたサスペンスであり、一人の女性の生きる力の物語」「ページを開いてすぐに没入できる作品」

 一昨年に小学館文庫から刊行され、各方面から絶賛頂いた女刑事D・D・ウォレンシリーズの第8作『棺の女』(リサ・ガードナー、満園真木・訳)。アメリカでは出れば必ず主要各紙のベストセラーリストに入る超人気シリーズで、日本でも大好評につき第7作 FEAR NOTHING を『無痛の子』と題して邦訳刊行します。

 シリーズの主役、タフな叩き上げ女刑事D・D・ウォレンは、「とにかく仕事が三度の飯より好き」というタイプの(職場にいたらちょっと迷惑な)ウルトラ・ワーカホリック刑事。本作ではいきなり冒頭で大怪我を負いますが、痛みに苛立ち思い通りに動けない歯がゆさに癇癪を起こしながら、周囲の制止も聞かず、休職中にもかかわらず捜査に走りまわる執念の女。読者は、彼女と一緒に身体も頭もフル回転させ、時に巧みなミスリードに騙されながら殺人事件の真相を追い求めることができるという、「王道ミステリー」なところが本作の第一の魅力です。

 そして第二の魅力は、もう一人のヒロイン。『棺の女』では、異常犯罪者に472日間も監禁され、後に生還した女性フローラの絶望や葛藤の描写が圧倒的でしたが、本作にも、フローラと同様に残酷な運命を背負った女性が登場します。その名はアデライン。死んだ父親はシリアルキラー、姉も殺人を重ね服役中、自身は遺伝子の異常による先天性無痛症を抱えている……という精神科医です。彼女は幼い頃に研究者の養父に引き取られ、痛みを感じられない故に痛み専門の精神科医になり、ペインコントロールのために来院したD・Dと出会うことになります。私たちはつい忘れがちですが、「痛み」は身体の不調を伝える大事な信号。それが無いということがいかに危険で、いかに人生を制限されるか。加えて、「痛み」という人類共通の感覚を持たず「永遠に他者に共感できない」という絶対的な孤独感。さらに「殺人者の肉親を持つ」ことに対する恐怖。アデラインのそれらの感情が通奏低音となって、作品全体に何とも言えない「哀しさ」をもたらしています。

 このヒロインに、編集中何度こみ上げてしまったことか。ゲラを読みながらこんなに泣いた作品は初めてかもしれません。終盤近く、唯一の肉親であり悪名高き殺人鬼である姉との関係と物語の流れが「あること」で大きく変わりますが、ここからラストまでの怒濤の展開には何度も鳥肌が立ち、エピローグでは涙腺決壊。完全に著者にやられました。

 ちなみにこの著者、巻末の謝辞によると腰痛で苦しんだ十年間にペインコントロールについて学んだことが本作の執筆のきっかけになったとか。腰痛をこんなエンタテインメントに昇華させてしまうとは……! 「痛み」ってすごい。

──『無痛の子』担当者より
 
『無痛の子』