◎編集者コラム◎ 『死ぬがよく候〈一〉 月』坂岡 真
◎編集者コラム◎
『死ぬがよく候〈一〉 月』坂岡 真
『死ぬがよく候』──かなりインパクトのあるタイトルだと思いませんか?
「死ぬのがよいぞ」って、いやいや、人間そう簡単に死んでしまってはいけないでしょう。困ります(汗)。
ずいぶん思い切った、逆転の発想のようにも受け取れるこの言葉、実はさる有名な御方の名言から拝借しているのです。
ググってしまえば、すぐ由来にたどり着いてしまいますが、いずれ作中で明かされますので、お楽しみとして取っておいていただければ、かたじけなく思います。
さて、本書の主人公・伊坂八郎兵衛は、死地を見つけては刀を抜いて、チンピラやら用心棒やらと大立ち回り、「死ぬのがよいぞ」と題しておきながら、一向に死なないのですが、それも豪撃(こわうち)という立身流の秘剣を身に着けているがゆえ、剣術遣いならではの運命なのでしょう(そもそも、一巻目で主人公が死んだら、シリーズが成立しないというのは、言いっこなしで)。
もともとはこの八郎兵衛、悪党に恐怖され、同僚からは一目置かれるほどの、腕利き隠密廻り同心だったのです。
しかも、付いた二つ名が「南町の虎」(南町奉行所にお勤めしています)。
それほど将来を期待されていた八郎兵衛でしたが、よんどころない事情で友だちを斬ってしまったがため、思いを寄せていた許嫁にも声をかけられずに、江戸を後にし、贖罪の旅に出るのでした。
雪の吹き荒ぶ中山道、刃が乱れ飛ぶ北国街道──なんの因縁か、宿場宿場で窮地に陥っている女性を救うべく、八郎兵衛は多くの事件に立ち向かいますが、いつも思いがけない困難が待ち受けているのです。
八郎兵衛が対峙するあれもこれも、すべては宿命、人間の悲しき業なのかもしれません……。
150万部を突破した人気シリーズ「鬼役」の著者ならではの、ただの時代小説ではない、チャンバラ・ノワールの醍醐味をぜひ味わってみて下さい。
2カ月連続刊行のシリーズ第1弾。読んで得する、剣豪放浪小説をどうぞ。