◎編集者コラム◎ 『警視庁レッドリスト』加藤実秋

◎編集者コラム◎

『警視庁レッドリスト』加藤実秋


 加藤実秋さんの小説『メゾン・ド・ポリス』のドラマが昨年1月にはじまった裏で、次の作品も映像化すべく密談を行っていた。

 文房具探偵、科学系時代小説などの案もあったが、腹をくくって警察小説に挑むことにした。昨今のドラマは、警察か医療モノが鉄板だ。

 キャラクター造形は、加藤さんの得意とするところ。〝墜ちたエリート〟を主人公に据えたい、との意向を汲んで検討を進めていく。

 問題は、主人公をどの部署にするのか、だった。

 まずは、警察組織の勉強からはじめ、並行して警察官にも何人か取材をした。その中で、「赤文字リスト」という聞き慣れない言葉が出てきた。明確な違法行為・コンプライアンス違反には至っていないが要注意と判断された職員をピックアップした名簿のことだという。そこに載ると、出世の見込みもなくなり、警察官として終わるとのことだった。

 この「赤文字リスト」という言葉、世の中には知られていない。新しい。イケる! 

 取材したメモをまとめ、加藤さんにメールした。すぐに『警視庁レッドリスト』と名付けられたプロット案が返送されてきた。

 増加する警察官の不祥事と世論への対策として新設された「職場環境改善推進室」で、警視庁人事第一課監察係を追われた主人公と民間企業から来た女性のコンビが、「赤文字リスト」に載せるべきか内偵する。内偵先は、警視庁管内と幅広く、所属する部署も多岐にわたる。読者は、警察組織についての理解を深めることになるだろう。

 警察という特殊な組織だからこそ問題視される警察官を、寄せられた情報にしたがい「赤文字リスト」入りさせるのかどうか、がこの小説の面白さである。

 しかし、一方で、出世をあきらめない主人公の暗躍が、もうひとつの読みどころ。行方不明になった元部下を、あの手この手で探索していく。その探索行の先には、警察組織の陰謀が!? ヒントは、タイトルに秘められているが、それは読んでからのお楽しみ。加藤実秋さんの新境地とも言える、骨太なミステリサスペンスに仕上がったと思う。

 

 そのあたりのテイストを、デザイナーの片岡忠彦さんがうまくひきだしてくれ、警察小説っぽさもある、新感覚なカバーになった。是非、書店で実物を見てほしい。できれば、手にとっていただきたい。

 

 また、『モップガール』読者には、うれしいサプライズも! あわせて楽しんでいただければ幸いである。

 

 最後に。このコラムを読んだ映像関係者からのオファーを心よりお待ちしております。

──『警視庁レッドリスト』担当者より

警視庁レッドリスト

『警視庁レッドリスト』
加藤実秋

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