◎編集者コラム◎ 『キッチンが呼んでる!』稲田俊輔

◎編集者コラム◎

『キッチンが呼んでる!』稲田俊輔


『キッチンが呼んでる!』写真
このわんぱくな料理をどのように楽しむかは、第4話で詳細に描かれます! ぜひ!

 稲田俊輔さん、あるいはイナダシュンスケさんをご存じですか(愚問を承知で書きました)。

 南インド料理店エリックサウスの総料理長として、SNSで食にまつわる多彩な情報を発信する人として、そして、レシピ集はもちろんお悩み相談や調理道具、おすすめの本などあらゆる「食」の書き手として。活躍の場を日々更新されている印象です。

 本作は、そんな稲田さんの初小説です(稲田さんがなぜ小説を書かれたか──気になる方はこちらのエッセイをお読みください)。

 エッセイの中で稲田さんは「料理をすることや食べることは、いつだってそこに何らかの物語を伴っている」と書かれています。ひとり暮らしを始めたばかりの主人公が、食材と調理道具を少しずつ買い足しながら料理をしたり、誰かと食事をしたりして過ごす27日間の様子は、まさにその「物語」です。自炊はもちろん、デリバリーもコンビニもファストフードもデパ地下も、どんなときもおいしく食べることを追求する主人公の姿勢に、きっと魅了されることでしょう。

 簡単でおいしいレシピや食べ方、食の豆知識などの情報が、物語の中にちりばめられていることも本作の魅力です。さらに、「マズ味」や「概念豚汁」といった稲田語録が登場したときには、稲田ファンのみなさんはほくそ笑んじゃうと思います。

 文庫化にあたって、本作のトークイベントにご登壇くださった小説家の原田ひ香さんが、とても熱のこもった解説をご寄稿くださいました。「おもしろくないわけ、ないじゃないですか」の一文がどんな考察から生まれたか、ぜひ本書でお読みください。

 また、フードエッセイストの平野紗季子さんによる書評の一節を、文庫の帯に引用させていただきました。こちらも全文をお読みいただきたいです。

 この原稿を書きながらゲラを読み返していたら、どうしてもある献立(第3話)を再現したくなり、先ほどスーパーへ行ってきました。購入したのは、トマトと玉ねぎ(と缶チューハイ)。それ以外の材料はあると思っていたのですが、ベーコンがありませんでした。ブイヨンを使えばいいかな……。

 キッチンが呼んでるので、原稿はこのへんで。わたしがこれから何をつくるか気になる方は、試し読みをお訪ねください。第3話まで公開しています!

 ──『キッチンが呼んでる!』担当者より

キッチンが呼んでる!
『キッチンが呼んでる!』
稲田俊輔
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