ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第112回

「ハクマン」第112回
Twitter 最高!
Threads 民たちは一体
なにを求めているのか?

Twitter がAPI制限によってまともに使えなくなり、Twitter を宣伝に使っている漫画家は大ピンチだ、という話をしたが、現在 Twitter は何事もなく使えており、私も今まで通り Twitter に仕事を害され続けている。
結局「API制限」が何だったのかわからず終いだし、当然調べようともしていない。
ただみんな漠然と「イーロンを抹殺すればなんとかなる」と思っており、奇しくも障害が七夕の時期とかぶったため、「イーロンを何とかしてくれ」という短冊が吊るされた笹が散見されたが、その画像が投稿されているのも Twitter という有様だ。

Twitter はそういう連中の集まりだ。だが俺はそんな Twitter(地元)を愛している。
漫画「地元最高!」のキャラたちが何故あんな治安の悪い地元から出て行かず、むしろそこを愛しているのか謎だったが、今ならその気持ちがよくわかるし、心から言える。「Twitter 最高!」と。

しかしどんなに最高な地元でもダムの底に沈んだら住むことはできない。
よって Twitter が瀕死の時、今や好機と思ったのかはわからないが、彗星の如く現れたSNS「Threads」に移行しようとしたユーザーは多かったようである。

だが、そんな難民たちを待ち受けていたのは、フォローしていないインフルエンサーや著名人のつぶやきで溢れた Twitter 以上のクソフィードであった。

まだ誰もフォローしていないので、とりあえおすすめのつぶやきが流れてくるのだろうと思っていたが、現在でも自分がフォローしているアカウントのつぶやきに未フォローのおすすめを混ぜてくる仕様のままらしい。
「俺はひたすらカルビを食いに来たんだ」という強い意志の客に「サービスです」と言ってサンチュを挟んでくるナチュラル志向店のようだ。

それでもおすすめされてくるのが男根に見える野菜画像とかであれば「フォーミー」そして「ウエルカム」を感じたと思うが、流れて来るのは顔面に自信ネキやニキの自撮りばかりだ。
これは Twitter 民にとって京都駅改札でお茶漬けを出される以上の歓迎である。

確かに Threads は Twitter に似ているのだが、機能はまだ Twitter 以下であり、何より現在PCブラウザ版が存在しないため「漫画の投稿には向いていない」というのが我々漫画家にとっては致命的である。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

小田雅久仁『禍』
採れたて本!【エンタメ#11】