ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第12回
ついにここまで来たか。
つまり、件の作家は、あのツイートで初めて自分の本の実売数を知ってしまったかもしれないのだ。しかも自分以外の誰の目にも触れる場で、である。
多くの作家が「そりゃないぜ」と反応したのは、自分が同じことをされた時のことを想像してしまったからではないだろうか。
私も想像して、ないタマがヒュンして、未だ帰ってこない。
ネットで暴露、というのは今まで、主に作家が出版社側に対して仕掛ける物であった。
あれもある意味「私は何かあったらネットに書く作家です」と言っているようなものなので「お前を殺して俺も死ぬ」という覚悟あっての特攻に近い。
しかし、出版社側が同じことをやると、どう考えても向こうの方が「持ってる武器が遥かにデカい」という事が判明したので、やはり作家には「戦車」とか物理的武器を所持することを許可してほしい。それでやっと「フェア」になる。
数が全てじゃないと言っても、一番わかりやすいバロメーターなので、やはりそれが低いと作家は落ち込んでしまう。
出版社の売り方の問題もあるが、それでも100%「わたしの本がウレないのはどう考えても出版社が悪い」という「わたウレ」思考になれる作家はレアであり、多くが「自分の作品が面白くなかったからだ」と思ってしまう。
中には臥薪嘗胆として、売れてない自著の実売数を聞き、何なら売れ残った自分の本が断裁するところまで見に行く、というストイックすぎて変態の域な作家もいるようだが、私は描けなくなりそうなので、絶対聞かない。
しかし聞かなくても、発行部数と重版がかかっていない時点で「御察し」なところもある。
個人差あれ、数字は作家の心を折るものではある。では、何が作家の心を甦らせるかというと、やはり読者だ。
実売が3でも、その3人が「面白かった」と言ってくれれば、また描く気になっちゃうのが作家である。