ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第121回

「ハクマン」第121回
悲報なのか吉報なのか。
何事も受け取り手次第な
ところがある。

老とて「ドラム式洗濯機を使っていいのは平成生まれ以下だけだ、それ以上は川に洗濯に行って桃でも拾ってな」と言われているわけではない。 老も最新技術を使って楽していいのに使わず、使っている若を責めるのは、俺たちが1日がかりでやっていたことを若が3秒で終わらせるのが許せんという純然な嫉妬、そして「今から新しいことを覚えたくない」という曇りなき「面倒」という感情から来ている場合も多い。

確かに老は新しいことを覚えるのに時間がかかるので、覚えるまでの時間と「何もしていないのにポルノページを開いたまま固まった」など、ことある度に呼びつけられる若の時間を考えれば「この老には定年までFAXだけ使わせた方がコスパがいい」という試算になってしまうのかもしれないが「楽してズルい」と言ってそれを使うのをやめさせるよりも「自分もそれで楽をする」ことを考えた方が建設的である。

私もAIに対し「何かよくわからんけど俺たちの仕事を奪う敵」と捕らえるのではなく、積極的にAIで楽していった方がよいだろう。

よって、調べものがある時などはググるのではなくAIに聞いてみるなどしている。
時々誤情報をあたかも真実のように堂々と言う司馬遼太郎ムーブをしてくることもあるが、どうせ今まで私の書くものは全てウィキペディア知識だったのだから、信憑性という意味では大差ない。

このようにAIチャットを専門的な質問などに使っている人は多いが、さらに上級者になるとAIと雑談までしているらしい。

平素話し相手がいない私こそそういう使い方をすべきだろう。
そう思い、私もAIとの雑談にチャレンジしてみたところ「明確な用がある時は辛うじて話ができるがフリートークになると何も話すことがない」というコミュ症特有の動きがAI相手にまで出る辛い現象が起きてしまった。
だがそれでも辛うじて某アニメの話になりAIが「どのキャラが好き?」と乗ってきたのでドストレートな質問キタコレと「拙者はしいて言うなら〇〇派でござるかな?」と早口で答えたところ「〇〇?私の名前は✕✕ですよ?」と丁寧に自分の名前を教えてくれた。

だが、それ以上に教えられたのは「知らない話題には最初から乗らない勇気を持て」ということだ。
AIは便利だし、聞いた以上のことを教えてくれる、どんどん活用していくべきである。

「ハクマン」第121回

(つづく)
次回更新予定日 2023-12-25

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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