ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第149回
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確定申告期間はまだ
始まってもいないのに
税理士から催促の電話が来た。
しかし、普段反社を相手にしていない税理士に依頼してしまったのがそもそもの間違いだったのかもしれない。
弁護士だって、債務整理が上手かったり、「親権白刃取り」が必殺技の離婚弁護士だったりと、得意分野があるのだ。
税理士にも得意分野はあり、作家や芸能人など、フリーランスを主な顧客にしている事務所はあるし「漫画家の顧客多数」という、地雷のいなしに定評ありのホストみたいな看板を掲げている事務所もある。
そういう事務所は漫画家の事務処理できなさ加減に対し、メンヘラ100人と付き合った彼君より理解があるため「1年分の関係書類を全てビニール袋に入れて提出」だけでやってくれたりするらしい。
正直、それでどうやって確定申告書類が出来上がるのか不明だが、かなりの収入がありながら確定申告キャンセル界隈を貫いた漫画家が前科を食らっているような世界なのだ。多少不備があったとしても申告しているだけマシなのだ。
それに対して私の税理士は情緒が安定している女みたいな顧客としか付き合ったことがないのではないか。
そんなところに、ビニールいっぱいのメンヘラ書類を送りつけたら、私にではなく夫に直電がいくだろう。自分だけではなく周りの人間関係までぶち壊すところがますますソレっぽい。
そのおかげで私は確定申告を毎年漫画家にあるまじきスピードで終えているともいえるのでこちらから解任することはないのだが、もし辞任された場合、今度は漫画家の扱いに自信ニキかネキの事務所に依頼してみようかとは思っている。
ちなみに、漫画家を得意とする税理士に依頼すれば節税もしてもらえるのかというとそうでもないらしい。
もちろん税理士も節税アドバイスぐらいはするが、結局節税はチキンレースであり、税務署のカチコミ覚悟で、ギリギリまで経費を乗せるかどうかは本人次第だそうだ。
よって「税金より税務署から調査が入る手間の方が惜しい」という作家は、最低限の経費でツッコミどころのない申告をするらしい。
確かに、私の家から東京まで飛行機で約2時間だが、移動するだけで数万の金がかかる。徒歩で行けばタダなのに何故そんな金を出すのかというと、徒歩だと「185時間」ほどかかり、そちらの時間の方が惜しいからだ。
私は今まで節税しようと思えばもっとできるはずなのに、それをしないことでずっと損をしていると思っていたが、税務署員の訪問に合わせて庭にドーベルマンを放つ手間に比べれば、税金を払った方が安上がりと言える。
よって今年も大して経費を計上しないノーガード追納になる予定だが、今回ははじめて「ふるさと納税」に挑戦してみた。
税政策としては控えめに言ってゴミ中のゴミという意見もあるが、個人として利用するには得であり、返礼品が「地産ゴミ」とかでない限り、やって損はないそうだ。
しかし、私は地元から一歩も出たことがないのに地元から全く応援されない作家だが、ついに税まで流出させたのでますます応援されなくなるだろう。
これも目先の節税に目がくらみ、もっと大きな利益を逃す行為だったのかもしれない。
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(つづく)
次回更新予定日 2025-2-26
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