ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第35回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第35回

コロナの影響で進んだ、
漫画業界のリモート化。
アシスタントとはどう接するのか?

依然コロナウィルスの影響下である。この書き出しも他の連載含めて30回ぐらいやっているのでそろそろ飽きてきた。

不安かつ不自由な生活には変わりないが、私のように元々ひきこもりで、仕事が飛ぶなど金銭的に若干致命傷を受けた以外なんら変わりない者、外出自粛生活や在宅やリモートワークに慣れてきてしまった者も多いと思う。

コロナが早く去ってくれるに越したことはないが、生活、特に仕事の仕方はコロナ後もこのままで良いんじゃないかと思っている人も中にはいるのではないだろうか。

日本は自称先進国の割には、未だにFAXが最前線で活躍していたり、全ての仕事が「データ化されたものを紙に印刷して偉い人の目に優しい形にする」からはじまったり、さらにそれに手書きで指示を書き込みスキャナで取り込んだ後USBに保存し郵送してみたりと、諸外国よりデジタル化やオンライン化が遅いと言われていた。

特に紙信仰が根強く、さらに前世がどら焼きで「焼き印を押されないと気持ちが悪い」という人が国の上層部になってしまったせいなのか、都心の大手企業ですら最近まで「印鑑をついた請求書の原本を郵送」という、本当の先進国からすれば二郎のオーダーより難解なことをしていたのである。

良く言えば、雅で詫び寂びを重んじる国、悪く言えばパソコンが使えない人に権力を与えてしまっている国だったのだが、コロナウィルスの影響によってそうも言っていられなくなり、言い方は悪いが、おかげで業務が急速にデジタル化、オンライン化、そして簡略化していったとも言える。

実際私の取引先も、今回の件で「会社に行けないから請求書をPDFで送ってくれ」という方針になったところが数社あり、とても助かっている。
それ以前に「PDFでも良かったんじゃねえか」という話だが、これがなかったらあと3年ぐらい紙の請求書を送ることになっていたかもしれない。

コロナの影響でデジタル化、オンライン化が進んだのは企業だけではなく、漫画業界も同様だと思う。

私はずっと一人で仕事をしているので定かではないのだが、アシスタントを使っている作家など、仕事場まで通勤させ、1つの部屋に数人机を並べて仕事、というのはどう考えてもよろしくない。
特に漫画業界は、不摂生で運動不足、外に出ないため免疫力も低かったりするので、1人罹ったら致命的であり、ガラスの仮面とかよりも先に、作者死亡のため未完のまま連載終了にになりかねない。

よって、今回アシスタントを完全在宅に切り替えた作家も少なくはないだろう。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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