ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第40回
「仕事」というものは
総じて人体に有害だ。
昔から漫画家と健康というのは水と油、ヤリマンと組曲と言われていたが、それはいささか古い発想というか、偏見である。
組曲を着ているヤリマンはいくらでもいるし、むしろヤリマンほど組曲を着ている説まである。
これ以上は新たな偏見を作り出すだけなので、この話題を掘るのはやめておくが、ともかく漫画家という仕事が健康に悪いという認識は誤りである。
漫画家が体に悪いのではなく「仕事」そのものが地球上で最も人体に有害だからだ。
仕事というのは総じて毒であり、漫画家というのはヒ素で死ぬか青酸カリで死ぬかという毒の種類の問題でしかない。
健康本を見ると、酒は止めろ、タバコは止めろ、ということは必ず書いてあり、ちょっと気の利いた本になると「呼吸を止めて完全に楽になろう」というところまで書いてくれているのに、何故か「働くのをやめろ」というのは終ぞ書かれていない。
未だ日本には徹底した言論統制があるという動かぬ証拠である。こういうところは戦前から何も変わっていない。嘆かわしい限りである。
さらにこの世界には、仕事をしても健康を害すが、仕事をしなくても餓死、とはまではいかなくとも、主食がトランス脂肪酸団子という名の菓子パンになるなどして結局健康を害すという、どんなスゴ腕女王様でも三角木馬で逃げだすマゾシステムが存在する。
このクソプログラムを書いたのは誰だ!と経理部所属の海原雄山も激おこであるが、このド変態システムを作ったエンジニアはもちろん「人間」なのである。
よって人間に産まれてきてしまった時点で「不健康になるために産まれてきた」と言っても過言ではない。
よって「健康でいたいなら漫画家なんかになるな」というのは間違っている。正しいアドバイスをするなら「カナブンとかに生まれ変われ」だ。
だが何せ漫画の神さまと呼ばれた手塚治虫御大が割と夭折してしまったため、漫画家=激務で早死にというイメージは未だに強い。
しかし、同じぐらい偉大な漫画家である水木しげるパイセンが自らを「睡眠神推し過激派」であることを公言され、93歳という大往生をしたことも記憶に新しい。