ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第71回
同業者同士、どうでもよい
世間話ばかりしている
それで久しぶりに同業者と関わってどうだったかというと、やはり景気の良い話をする作家には、暴力!振るわずにいられない!みたいな気分になるので、やはり血気盛んな20代の頃に関わらなくて本当によかったと思う。
現在は自分も既にアラフォーなので、「こいつの玄関に蜂の巣ができて刺されないかな」という自分の手は汚さない暴力しか考えなくなった。
しかし景気の良い話を聞かなければいけない場合もあるが、景気が悪い話も聞けるのが同業者とのトークの良いところである。
そもそも怒りや不安というのは「何故俺だけがこんな目に」という感情から生まれてくるものである。
我々の尻は大体中央が真っ二つに割れているが、それを不安に思っている人はいないと思う。
しかし「他の奴も割れている」ということを知らなければ相当怖いのではないだろうか。
それと同じように景気が悪い作家同士が集まると「売れてる本ばかり目につくので本屋に入れなくなった」「連載終了の判断をされるだけなので単行本発売が全く嬉しくない」が、全く自分だけではなく、もはや「標準装備」レベルに搭載されているということが判明し、安心するのである。
アルコールや薬物依存の治療しかり、悩みというのは当事者以外には理解できないものなので、同じ問題を抱えている同士が繋がるのが回復の早道と言われている。
しかし、漫画というのは他の業界より「一発逆転」の可能性が高い業種なのである。
つまり今「本屋に入れない組」として傷をなめ合っている相手の本が来年には、大量に本屋に積まれている恐れがあるのだ。
同業者との交流は諸刃の剣である、せっかく同業他社と関わりがなくても何ら問題ない業界にいるのにわざわざ絡んで自分はダメージを追い、相手は理由もなく蜂に刺されるというのは誰も幸せにならない。
同じことで悩んでいる同士で繋がりたいなら「最近体中の至る所が切れて変な汁がでる人集まれ」みたいなスペースを建てたほうが良いのかもしれない。
「老化」だけは万人に平等で本当に頼もしい。
(つづく)