ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第7回
漫画家の真の修羅場は、〆切りなどではない。
書くことがない、と言いながらここまで、書くことがない話を書いてしまったのだが、当コラムに書くことがないのは、漫画家という職業が「すごく地味」という致命的問題があるせいだと思う。
特殊な職業のように思えるかもしれないが、漫画家の仕事というのは、ひたすら部屋で描くことを考えて、思いついたら無心で描く、という圧倒的孤独かつ、動きのない仕事なのだ。
「今日超弩級のクレーマーがくるかもしれない」という可能性を常に孕んでいるコンビニバイトの方がよほどエキサイティングなのである。
むしろこのコラムに毎回書くことがあるというのは「常に現場が事故っている」のと同じなのであまり良い事ではない。
せめて書く気になるように、ぜひ当コラムが面白いとSNSでつぶやいてくれれば幸いだ。もちろん「ハクマン」と「カレー沢」という文言を入れてくれれば間違いなく見つけ出す所存だ。
だが、私の原稿作業が滞る一番の原因は「エゴサの時間が長すぎる」だったりもする。
ちなみに漫画は長いストーリー漫画より、ページ数の少ないショート漫画の方が楽というイメージがあるかもしれないし、確かに作画に関してはそうだと思う。
だがネタ出し段階では、毎回きっちりオチをつけなければいけないショートの方が苦戦する場合もあるのだ。
ストーリーの場合は「この続きは来月の俺が考える」と割り切って「意味ありげな伏線だけの1話」で乗り切ることも可能なのだ。
だが、それを乱用すると、突然の打ち切りなどに対応できなくなる、来月の俺も同じ俺である、と過信してはいけないのだ。
(つづく)