ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第86回

ハクマン第86回
私も夫や実家のことは
エッセイに相当書いており、
もちろん無許可だ。

私はこのようなコラムや漫画など、いわゆるエッセイ系をクソほど書いている。

最近エッセイ業界に激震が走る出来事があった。

詳細は省く、というか怖過ぎて書けないが、エッセイ漫画のネタにされていた作者の親族側が実はすごく嫌だった、という話である。

しかしこのエッセイに書かれた側が激おこ脱糞丸という現象はそこまで珍しくなく、前までジョイフルで談笑していた相手と法廷で待ち合わせするケースもしばしばだ。

自分のプライベートを勝手に書かれた上にそれで小銭を稼がれた、もしくは自分の半生を書かれた挙句それが初版3000部から微動だにしない、ともなれば書かれた側が怒るのも当然である。

エッセイにも作者以外の人物が登場することはある。
慎重な作家になると本人の許可を取ってから書くようだが、許可を取っているという解放感から筆がノリにノってしまい、相手の FANZA 購入履歴まで書いてしまい、結局弁護士を通じてやり合う結果になってしまう。

このように、エッセイに他人を描くというのはリスクが高い。
載せる前に内容をチェックしてもらえば良いのかもしれないが、内容の大幅修正依頼や「俺の名前の前には必ず『ディーンフジオカ似の』という枕をつけろ」と言われたらコスパが悪いし、もし載せるなと言われたら大損失である。

またその時には良くても時間が経って「俺はどちらかというとディーンというよりドンソクだった」と言い出し、出版差し止めを求められたら厄介である。

よって、エッセイは自分のことだけ書いていた方が安全なのだが、それもノーリスクというわけではない。

エッセイというのは己のプライベートと人生、そして魂の切り売りである。
これは墓場まで持っていくと決意した過去さえ「書くことがない」という理由で書いてしまったりする。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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