ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第87回

ハクマン第87回
漫画業界と漫画家を
終了にさせかねない制度が
施行されようとしている。

自分達はそこまでインボイスの影響を受けないのに、細々やっている作家や、まだ駆け出し作家のためにこういった声明を出してくれるのはありがたいことである。

しかし、現在課税事業主でインボイスを出せる作家とて無影響というわけではない。

なぜなら今まで出さなくてよかった「請求書」を出さなければいけなくなるからだ。
むしろこちらの影響の方が甚大であり、漫画家協会が出した声明にも「事務処理負担が増加し漫画家の活動を阻害する」という反対理由が書かれている。

これは暗に「漫画家に請求書出せとか正気か?」という意味だ。
こうなると、年収1000万超えていれば良いという話ではなくなり「事務員を雇えるレベルの漫画家は餓死」となり、出版社側の経理も崩壊する。

このように漫画家業界にとってインボイスは、単に税金が増えるとか増えないとかの問題ではなく、システムを崩壊させる制度なのだ。

むしろ、事務処理が死ぬほどできない人間でも辛うじて税金を納めることができたのが漫画家という職業である。

それを奪ったところで、漫画家は会社員になんかなれないし、むしろ税金のお世話になる存在になると思う。

単に税収を増やしたいだけなら本当にやめた方がいい。

俺たちの請求書出せないっぷりを甘くみないでほしい。

ハクマン第87回

(つづく)
次回更新予定日 2022-7-25

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『1793』ニクラス・ナット・オ・ダーグ 訳/ヘレンハルメ美穂
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