ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第87回

ハクマン第87回
漫画業界と漫画家を
終了にさせかねない制度が
施行されようとしている。

こう見えて私も日本漫画家協会の一員である。

そう書いたところで今年度の会費を払っていないことに気づいて払いに行った、危うく一員じゃなくなるところであった。

しかし漫画家協会の会費の支払い期日は4月1日から3月31日までなのだ。つまり今年度の会費は今年度中に払えば良いというガバガバビッチ締め切りなのである。

さすが、漫画家協会、日頃締め切りに苦しめられている作家をさらに会費の締め切りでいたぶるような真似はしたくないという粋な計らいである。
それに「6月末締め切り」とかしても何せ相手は漫画家なのだから9割守らないに決まっている。逆に会員の9割に督促状を送らなければいけなくなり膨大な手間と経費がかかってしまうのだ。

一見期限が長すぎて会計が大変そうに見えるが、漫画家相手だとむしろ「これが一番スムーズ」なのではないかと思われる。
漫画家が作っただけあっても、漫画家のことをよく理解した運営である。

なぜ漫画家協会に入ったかというと日本の漫画家の一員として漫画界を良くしていきたいと思ったからではなく「文芸美術国民保健協会」に加入するためである。

漫画家と言っても社会的立場は無職と大差ないので、基本的に国民健康保険に加入しなければならないのだが、それだと保険料が莫大な金額になってしまう場合がある。
だが文美保険に入れば保険料は一律で済むのだ。

よって100%文美保険目当てで入ったのだが、先方も体目当てとわかっていながら受け入れてくれる優しいヤリマンみたいなところがあり、最初から文美に入る前提の案内を出してくれる親切さである。

だが漫画家の中には、協会に入って文美に加入した方が得だし申込書も取り寄せたが「申込書を書いて出すのが面倒」という理由で未だに高額な保険料を諾々と払い続けている者もいる。
もったいないと思うかもしれないが、そういう人間にとって、書類を提出するより高額な保険料を支払う方が「楽」なのである。
確かに協会加入申込書は自分の漫画家としての履歴を手書きしたり著作のコピーを添付したりと多少面倒臭い。
私も修正テープを使いすぎて書類に若干厚みが出てしまったが、それでも通ったので運営は「漫画家なのによく頑張った」という点を評価してくれるタイプだ。

つまり漫画家協会会員は書類提出という難関を突破したエリート集団なのである。
そんな精鋭部隊ですら「今年度会費は今年度中に払えば良い」というガバーズ&マンツァーな設定にしないと途端に滞り出すのだ。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『1793』ニクラス・ナット・オ・ダーグ 訳/ヘレンハルメ美穂
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