ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第9回
「シルエットでも何のキャラかわかる」ことだ。
「巻きグソ」などはその代表だろう。
またこの原稿を催促が来てから書いている。
2回ぐらいは催促前に原稿を出したのだが、私の連載のように長くは続かなかった。
だが、漫画家コラムとは言っても私の本業は何度も言っているように無職だし、本数だけならこのように文章の仕事の方が多い。
また、それ以外でもタダでなければ大体の仕事は引き受けるので、年々、肩書きが名状し難き何か、になりつつある。
よって、その中でも一番、他人から一目置かれる「無職」を名乗っているのだ。
その一目置かれぶりたるや、名乗った瞬間、距離まで置かれるVIP待遇である。
自分としては、どの仕事が良いというわけではなく、やらせてもらえるなら何でもありがたいと思っている。
だが最近、原稿料がかなり安い仕事が来た時は、さすがに断るか、原稿料交渉のメールをしようと思った。
しかし普段仕事を断りなれていないせいか、そのメールの文面に3日ほど悩んでしまい「このメールを書く時間で原稿が書ける」と思ったので、結局受けたぐらいだ。
その、色々やっている仕事の中に「他人のキャラを描く」というものもある。
ゲームやアニメのアンソロジーや、映画の感想などで、他人が作ったキャラクターを使って漫画やイラストを描くことがたまにあるのだ。
私は無職だが、オタクでもある。
画面から決して出てこない、X軸とY軸だけで構築されている男に「尊い」と叫んでよく絶命しているタイプの奴だ。
よって子供の時から、人気アニメや漫画のキャラクターを描く、所謂「二次創作」をするのが好きであった。
それが大人になって、本家の許しを得て描ける上、原稿料までもらえるなんて、ある意味オリジナル漫画で漫画家デビューしたよりも「夢が叶った」と言えるだろう。
だが残酷なことに、学生時代、勉強など、やることもやらずに授業中でも一心不乱にやっていた、お他人様のキャラを描くという行為が、〆切りのある原稿になった途端、その原稿をやらずにツイッターをやっているという始末なのである。
「好きなことは仕事にするもんじゃないよ」というのが、ただの老害の寝言ではないことがわかった瞬間だ。