【戦争小説から恋愛小説まで】丹羽文雄のオススメ作品をご紹介!

寺に生まれ、僧侶の職を捨てて上京し、新進作家の仲間入りをした丹羽文雄。戦争や宗教者、恋愛など幅広い題材を扱い、数多くの作品を生み出した丹羽文雄の代表作をご紹介します。

海戦

海戦_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4122036984

太平洋戦争時に、軍艦に従軍記者として同乗した自身の経験を綴った、戦争記録文学です。兵士たちの日常生活から、迫り来る戦闘、そして負傷した兵士たちのやりとりなど、第一次ソロモン海戦をめぐる現実が、創作では描けない鮮烈なリアリティをもって語られます。兵士たち自身の体験記とは異なり、船内の日常や非日常の全体をジャーナリストの目から観察した本作は、事実の活写に徹底しながらも丹羽文雄自身が感じた戦争の壮絶さ、不条理さ、最前線に立つ人々の決意を生々しく表現した、必読の一冊です。

昭和十七年八月八日の深夜、第八艦隊はソロモン海域でアメリカ海軍と交戦、多大な戦果をあげる。三十九歳の著者は旗艦「鳥海」に乗りこみ、この海戦に報道班員として従軍、表題作を成した。兵士たちの日常、実際の戦闘、そして戦傷者の姿を描破しながら、戦争の本質を表現した力作。

鮎・母の日・妻

鮎・母の日・妻_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4061984306

幼い頃に別れ、成人してから再び交流するようになった作者と母。その母をめぐる思い出や、老いていく母と自らの関係を冷静に書き留めた短編集が本作です。避けては通れない実の母の老耄ろうもう。彼女の振る舞いを淡々と記述するその様からは、かつて生き別れていた過去も踏まえた、丹羽文雄の複雑な感情がひしひしと伝わってきます。自身の妻について書いた短編「妻」も収録されており、近しい人々との人間関係を通して丹羽文雄その人が透けて見える、傑作です。

処女作「秋」をはじめ代表的な短篇を網羅。母への複雑な想いを描く出世作「鮎」「贅肉」など初期作品、「母の日」「うなずく」など次第に崩れゆく母を冷徹に凝視する中期の作品に晩年の「妻」など10篇。

親鸞

親鸞_書影

浄土真宗の寺に生まれ、僧職にも就いていた作者。一度は宗教の世界から逃げ出したものの、歳を重ねるにつれ自身の根源が仏教にあることを思い知り、本作を通して浄土真宗の開祖である親鸞と真摯に向き合いました。人として生まれ、人として生き抜きながら浄土真宗を創始し広めた親鸞の生涯を、壮大なスケールで描いた作品。人として生きたからこそ親鸞が味わった苦難、絶望を正面から書ききった、宗教文学の傑作として君臨しています。

弾圧、非難と闘いながら、浄土真宗を創始し、あくまでも人間として生き抜いた親鸞の苦難の生涯を描く大作。

日本敗れたり―御前会議

従軍記者、従軍文士として活動した丹羽文雄が、最後の御前会議に出席した時のことを記したルポルタージュです。菊池寛や横光利一など、全12名が出席したこの会議では、士気高揚を狙って文壇を動員し、戦争文学を書かせることが議論されました。戦争時政府の中枢で何が語られていたのか、隠されていた事実を赤裸々に書いた、戦争記録文学として重要な作品に位置づけられています。

四季の旋律

四季の旋律_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101017220

1970〜1980年代の日本社会を背景にして、女性の生き方を追求した作品です。夫を亡くした妻と、残された3人の娘たち。女性の地位が社会によって制限されながらも、それを突破しようとする人々がようやく注目されるようになった時代。そんな風潮の中で、仕事し、恋愛し、結婚し、それぞれの道を模索する、タイプの異なる女性たちの姿が描かれています。生き方に悩み、将来に不安や希望を持つ彼女たちの姿は、現在を生きる女性たちからも深い共感を得るでしょう。

最後に

丹羽文雄のおすすめ作品は如何でしたか?
僧侶の道を捨て、文学者の道に進んだ丹羽文雄の力強い作品を是非手にとって見てはいかがでしょうか。

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初出:P+D MAGAZINE(2016/09/20)

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