スピリチュアル探偵 第4回

スピリチュアル探偵 第4回
日本人なら一度は体験したい、
イタコの口寄せ!
探偵は東北に向かった。

 日本が誇るシャーマニズム文化、イタコ。死者の霊魂を体に降ろす"口寄せ"は、まさしくスピリチュアルの極みであり、もし本当にそんな能力が存在するのなら、ぜひ話を聞いてみたい昔の偉人が山ほどいます。

 そういえば以前、某サブカル誌の企画会議で、「イタコを2人用意して、手塚治虫先生と藤子・F・不二雄先生の対談をやろう」と提案してみたものの、「恐山(青森県・下北半島)までの交通費が高い」というしょうもない理由でボツになったこともありましたっけ。

 それはさておき、やはり一度は体験してみたいイタコの口寄せ。そのために、いつかは恐山に足を運ばねばと思っていたものの、実はそうでもないようで。イタコは東北全体に広く分布する神職であり、青森だけでなく岩手や宮城、山形などわりとあちこちに存在しているのだそう。

 ある日、出張先の秋田でこんな噂話が飛び込んできました。

「行方不明になっていた人の所在を警察より先に突き止めた、凄腕のイタコが県内にいるよ。5000円ほど包めば誰でも見てもらえるそうだから行ってみたら?」

 もちろん、この情報に一も二もなく飛びついたワタクシ。スピリチュアル探偵、出動です。

〈CASE.4〉まるで超能力捜査官! 凄腕と評判のイタコさんを訪ねて秋田まで

 それにしても、行方不明者を警察より先に発見してしまうなんて、テレビで見る超能力捜査官を地で行くスゴさです。いったいどういう話なのかと言いますと──。

 数年前、秋田県内で男性が失踪してしまいました。前触れなどは一切なく、いつものように夕食をとってくつろいでいたところ、「ちょっとタバコを買ってくる」と家族に告げて出掛けたきり、翌日になっても戻らず。奥さんは警察に捜索願を出しました。

 しかし、数日にわたって捜索が行われるも、めぼしい成果はなし。忽然と姿を消した夫を待ち続けて2週間ほど経った頃、奥さんは藁にもすがる思いで、人から紹介されたイタコの女性に相談してみたのだそう。すると……。

「旦那さんの周りに、湿った草むらが見えます。わりと海に近い街道沿いだと思います。旦那さんのすぐそばに古い自動販売機が見えるのですが……、ごめんなさい。他に目印になるようなものが見当たらないんです」

 手掛かりらしい情報を提供できず、申し訳なさそうに語るイタコ。しかしその数日後、夫の遺体はまさにその通りのシチュエーション、近くに自動販売機が立つ国道沿いの草むらで発見されたのだそうです。

 正直なところ、これがどのくらい尾ひれがついて僕の耳まで届いたエピソードなのかはわかりません。ただ、ネットや雑誌で見つけた情報ではなく、あくまで"知人の知人"の体験であることに、僕は一定のリアリティを感じました。

 幸いにして件のイタコさんには人を2人ほど介せば連絡がつくようなので、翌月、僕は再び秋田へ向かうことにしたのでした。

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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