【検証】サブカルの殿堂、ヴィレッジヴァンガードで昭和文学は売れるのか?
おもしろ雑貨の取り扱いなどで知られる「遊べる本屋」、ヴィレッジヴァンガードで、ディープな昭和文学は売れるのでしょうか?P+D MAGAZINEが検証してみました。
店内を所狭しと埋め尽くす数々の雑貨、つねに流行の半歩先をいくBGM、そして全ての売り場を飾る賑やかなPOP……。そんな「遊べる本屋」、ヴィレッジヴァンガード(通称ヴィレバン)をご存知ですか?
今では都内各所で見かけることの多いヴィレッジヴァンガードですが、「書籍の専門店」というよりもむしろ「サブカル雑貨屋」というイメージを抱いている方も多いのはないでしょうか。
一方で、このP+D MAGAZINEは昭和文芸に関する情報を中心に取り上げているメディア。世間一般のヴィレッジヴァンガードのイメージとは、少々毛並みが異なっているかも……?
そこで今回、このミスマッチに興味を誘われたP+D MAGAZINE編集部は、このような企画を行うこととなりました。
その企画とはズバリ……
内容は単純明快。
① P+D BOOKSからペーパーバック&電子書籍で続々発刊されている昭和文学の名作たちを、ヴィレッジヴァンガードの文芸コーナーに設置した特設棚で一ヶ月間販売する(実施期間は4月20日〜5月末日まで)。
② P+D MAGAZINEの読者の皆様に事前アンケートにご協力いただき、今回ヴィレッジヴァンガードに配本した10冊の昭和文学作品のうち、最も売れた本はなにか(はたまた全く売れないのか)、予想ダービーを行う。
③ 気になる結果発表は、6月冒頭にP+D MAGAZINEに掲載する。
▼ヴィレッジヴァンガード・昭和文学ダービーのラインアップはこの10冊!
そして今回、この企画にご協力いただくことになったのは、ヴィレッジヴァンガードの関東第一号店である下北沢店の長谷川 朗さん。
“バンドマンの聖地”である下北沢のヴィレッジヴァンガードに、超絶ディープな昭和文学……。正直に申しますと、この企画の発案当初には、どこか「当たって砕けろ」的なところがあったことは否めません。
しかし、実証企画の「準備編」の一環として行った長谷川さんへのインタビューを通じて、我々P+D MAGAZINE編集部はヴィレッジヴァンガードの販売スタッフさんたちの“本気”と“凄み”を知ることとなったのです。
ということで、結果予想アンケート調査も兼ねた企画前編、どうぞごゆっくりとお楽しみください。
売り場を“編集”する技術
今年で創業30周年を迎えるヴィレッジヴァンガード。
第1号店である名古屋本店がオープンした当初は、現在のような雑貨メインの店舗ではなく、書籍がメインとなった個人商店だったといいます。
(長谷川)「当時はヴィレッジヴァンガードもほとんどその名が知られていなくて、新刊の配本もなかった。それでも良いものを売っていこうと、ロングセラーを主軸とした戦略を立てていたようです。それは今も継承されている方向性で、週の売り上げトップ20データなどを見ていると、昔から売れ続けている書籍がいくつもあります。」
そんなヴィレッジヴァンガードの本屋としてのユニークさを作り上げているのが、フェア展開の特設棚。ブレイク直前の商品を核としつつ、既存の商品をどう絡めていくか戦略を練っていくのです。
例えばまだブレイク前だった星野源さんがソロデビューを果たした際には、本人の好きな物・影響を受けたCD・よく着ているTシャツなどをスタッフがリサーチし、関連商品として棚に並べたそう。
(長谷川)「スタッフが知らなかったことはお客さんも新鮮に思うはず。その想いをもとに関連商品を配置し、POPを作り、お客さんにこちらから購買を提案するように売り場を編集していきます。“スタッフがミーハーであること”がお客さんとの最初の接点になっているのだと思います。」
実際に、今回の昭和文芸フェアで取り扱う佐野洋子の『北京のこども』のPOP製作の模様を拝見させてもらいました。佐野洋子の一番よく知られている絵本、『100万回生きたねこ』を太字でアイキャッチとし、関心をそそられたお客さんが続きを読み進めるように情報を載せていきます。
こうしたPOP作りは、新米スタッフが先輩を師匠とし、字体や文面にいたるまで徹底的に練習帳で訓練するそうです。そのような文化を通じて、販売スタッフの一人一人がコピーライターであり、マーケターであり、編集者でもある……そんなヴィレッジヴァンガードの伝統が培われてきたのです。
(次ページ:「ドンキとは違うのだよ、ドンキとは!」)