【結果発表!】ヴィレッジヴァンガードで一番売れた昭和文学作品は?

サブカルの殿堂、ヴィレッジヴァンガード下北沢店で昭和文学は売れるのか?……まさかのコラボ検証企画を通じて一番売れた作品はなんだったのか、気になる結果発表です!

P+D MAGAZINEでは、以前、次のような検証企画を行いました。

【検証】サブカルの殿堂、ヴィレッジヴァンガードで昭和文学は売れるのか?

 

2016年4月20から1ヶ月の間、P+D BOOKSからペーパーバック&電子書籍で続々発刊されている昭和文学の名作たちを、ヴィレッジヴァンガード下北沢店の文芸コーナーに設置した特設棚で販売するというこの企画。

果たして、ヴィレバンユーザーに最も「刺さった」タイトルはどの一冊だったのでしょうか?

気になる結果発表の前に、まずは今回ヴィレッジヴァンガード下北沢店に配本した10冊の昭和文学作品のラインナップをおさらいしましょう。

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前編記事に合わせて行ったアンケートでは、1位『サド復活』(50%)、2位『ヘチマくん』(25%)、3位『親友』(14%)、4位『どくとるマンボウ追想記』(10%)という予想結果でした。

さて、この企画の実施から1ヶ月以上が経ち、最も売れた本は何だったのでしょうか?

いよいよ結果発表です!

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ヴィレッジヴァンガード下北沢で一番売れた昭和文学、それは

澁澤龍彦の『サド復活』でした!

 

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澁澤龍彦『サド復活

マルキ・ド・サドの思想を縦横に紹介しつつ、フーリエ、マルクス、トロツキー、ブルトン、バタイユなどの精読を通して、テロル、暴力、自由、美、ユートピアなどについて独自の考察を開示し、自らの文学的位相を確然と宣言した記念碑的なエッセイ8篇。

 

各タイトル10冊ずつという配本条件の中、サド復活は6冊が売れるという健闘ぶり。ちなみに、2位以下のタイトルは下記の通り。

2位(4冊)[順位(売れた冊数)]

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3位(3冊)

“üeol 9‰ñ_ƒwƒ`ƒ}‚­‚ñ

4位(2冊)

sanoyoko *09 ‰‹‚Ì’†_“üeol kitamorio

7位(1冊)

neppu irokawa

9位(0冊)

shinyu ketsuzoku

 

全体的な売り上げとしては「やや残念」な結果であったことは否めませんが、2位に輝いた『噺のまくら』の奮闘など、事前予想を裏切るユニークな要素も。

この結果はどのような購買傾向を反映したものなのでしょうか? ヴィレッジヴァンガード下北沢店の書籍担当・長谷川朗さんのインタビューとともに振り返りましょう。

 

デジタルと紙媒体。これからの読書人の育て方

〔聞き手:加勢 犬(P+D MAGAZINE編集部)〕

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— このキャンペーンを通じてP+Dの昭和文芸作品を実際に手に取って購買されたのは、どのような層の方でしたか?

 

長谷川:男女比は半々くらいで、30代後半から40代、50代が多く、若い方はあまりいなかったですね。

僕自身が偶然見た人たちとしては、1位の澁澤に関しては女性の方が多く手に取っていたかな、というイメージがありますね。三遊亭圓生の『噺のまくら』ですと、やはり40代くらいの男性が購買層でした。

 

— 高校生くらいの年代をメインターゲットにしているかと思いきや、しっかり上の世代にも届いている。ヴィレッジヴァンガードの客層の幅広さが窺えますね。

 

長谷川: 昔に比べると、アイドル商品をはじめ若い人に向けての売り場が増えていることは確かですが、コアなファン向けの品揃えを心がけているので、今回のキャンペーンでも年季の入った文芸ファンにはしっかり届いたかなと思います。

出版社さんや作家さんと話をしていても、「最近ヴィレバン行ってないなあ」、「若い頃は来ていたけれど」という話を聞いたりするんですけれど、実際に来店していただいた際には「こういうネタもしっかりあって、やっぱりヴィレバンいいなあ」と言われることがありますね。

 

— やはり店舗として客層と共に年を取っていくために、上の層への配慮もしていきたいとお考えなのでしょうか。

 

長谷川:自分も年を取るにつれ、メインの客層である若いお客さんが求めるものがだんだん分からなくなってくるというのがあって、バイトの子の意見を聞いて売り場に生かすということも多くなっていますね。とはいえ自分自身も仕事が楽しくなきゃやってられないので、自分が良いと思ったものをもちろん入れていますし、若い方に届くものも入れているし、という状況ですね。

 

— 全体的な売り上げとしては「やや残念」な結果に終わりましたが、今回のキャンペーンをやってみての長谷川さん自身の感想などあれば教えてください。

 

長谷川:渋めのラインナップでも、届く人には届くので今後もそのバランスはとっていきたいというのが一番の感想です。ただやはり、打率を上げるという点では苦戦したかなとは思いますが。

「結局、売り方ひとつで結果は大きく変わるものだ」というのはいつも感じています。本が売れない時代と言いつつも、一般的に「本が売れない時代だから」といって諦めるのはちょっと違います。又吉さんのような存在によって文学ブームが起こったりとか、ちょっとしたスイッチの入れ方で売れるか売れないかは変化するので。

今は三島由紀夫の『美しい星』が映画化されるということで注目を浴びていますが、やはり実は気づいていないだけで面白いものはたくさんあるなと。ここはやり方次第で、特にヴィレッジヴァンガードは普通じゃない売り方もできる環境なので、そこはもっとアイデアを出していきたいですね。

 

— 「流行のものを置いている」だけだと予定調和に成ってしまうから、発掘の楽しみも提案していきたいと。

 

長谷川:そうですね。以前にも吉本ばななさんのファンというバイトの子がいて、あまりメジャーではない作品がすごく好きで推していたらすごく売れたということもありましたね。そこは本当にスタッフの情熱とかによって売れる・売れないがでてくるのは感じていますね。

 

— 今回のキャンペーンを通じて知った、P+D BOOKSの取り組みについて何か感想はございますか。

 

長谷川:P+D BOOKSはデジタルと紙媒体の両方をやっているのがすごく面白いな、と思いました。電子書籍が出たからと言って全てデジタルだけで売っていくというのもしっくりこないですし、状況によってどっちにも手段を選べることでより本が身近になったというのは面白いと思います。

僕は映画が好きなのですが、ネット動画での映画配信が普及してきたことにより、それまで電車の中でもぼうっとTwitterを見ていたけど、その時間も映画を集中して見られるようになったのは、時間をすごく有効的に使えてるなというように思いますね。

 

— 楽しみ方の選択肢が増えて、上映を見過ごしていた過去作であっても手軽に見られるようになったということは、P+D BOOKSにも繋がりますよね。

 

長谷川:映画も小説も漫画も、スマホやタブレットで楽しめるようになったことによって、昔よりも選択肢がすごく増えていて、そこはすごく面白いなあと思います。この変化の中でたくましい趣味人がこれからは育っていくし、文芸というジャンルも生き残っていくと思いますね。

— なるほど。つまり……

 

長谷川+

オレたちの戦いは、

 

まだこれからだ!!!

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初出:P+D MAGAZINE(2016/06/25)

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