源流の人 第47回 ◇ 瀧本伸哉(株式会社 SUMESHI 代表取締役、寿司リーマン)
寿司を毎日食べ続けること1000日、「寿司リーマン」が目指すSUSHI WORLD
取材協力=箱崎町すみと
東京・水天宮前、「箱崎町すみと」。「寿司リーマン」瀧本から待ち合わせ場所に指定されたこの寿司店は、横浜・関内にある名店「なか條」や銀座の名店で研鑽を積んできた40代の若い大将・黒川清人氏が、2023年9月に開店させたばかりの店だ。
日本橋界隈の落ち着いた一角のビルの地下に、白木の美しいL字型カウンターを構える。彗星のごとく現れた江戸前寿司の新名店は、温和で静かな大将のたたずまいと、その確かな腕前で、さっそく人気を博している。そこへ「SUMESHI」の社名ロゴの入った白Tシャツ姿で現れた「寿司リーマン」瀧本は、屈託のない笑顔を見せている。
「僕はただ寿司が好きで、毎日食べ続けているだけなんです。最高で1日4食とかの日もあります。4軒回るのは稀ですが、寿司には飽きないですね(笑)」
ドカッと座った瀧本の前に大将が差し出したのは、白甘鯛の握り。赤酢の酢飯に、甘やかな鯛が輝いていて、見るからに美味しそうだ。瀧本がさっそく手に取ってほおばる。
「うまっ!」
その表情が、いっそう明るくなる。
1日で平均15カン、連続で寿司を食べ続けて1000日を達成した。私事になるが、本稿の筆者は寿司の街・小樽育ち。寿司は好きだが「毎日食べよう」とは到底思わない。特別な「ハレの日」にいただくもの、というイメージが強いし、連日なんてもったいなくて、寿司に失礼かも……。瀧本は続ける。
「毎日食べ続けているって言うと、だいたい笑われますね。でも、僕にとって寿司を食べることは、呼吸するのと一緒。『寿司リーマン』として、寿司を愛する者として、毎日食べるっていうのは、『生きる』ことと同じなんです。だから、寿司を食べていないと体がおかしくなる。気持ち悪くなる。そんな体質になってしまいました(笑)」
江戸前寿司だけではない。富山の「ます寿司」や、滋賀の「ふな寿司」、「箱寿司」「押し寿司」「ちらし寿司」「いなり寿司」……。こうした「何カン」と数えにくいものも寿司と捉える。「ガリ」をぽりぽりと食べながら瀧本は続ける。
「僕の中で寿司のカウントになるのは、これは僕の確固たる定義ですけど、『酢飯を使っているかどうか』。酢飯を使った海鮮丼も、寿司にカウントします。いろんな歴史、土地の文化背景がある。高級店の握り寿司だけが寿司だとは思わない。回転寿司も立派な寿司ですし、町の寿司屋さんでおじいちゃんが握る寿司も同じ。月1、2回は自分でも握るので、それも寿司。それだけ幅広いんです」
「繋ぐ」立場から寿司を見直す
早稲田大学を卒業してから、リクルートに入社。2017年、瀧本が25歳の時に石川県野々市市の名店「太平寿し」(2022年閉店)を訪れ感動したのをきっかけに、2020年から「寿司リーマン」を名乗り、津々浦々の寿司店をめぐっては Instagram に投稿し続けた。YouTube と合わせると、総フォロワー数は17万人以上に膨れ上がっている。リクルートを退社後に、起業。「株式会社 SUMESHI」代表として、寿司と人とを繋ぐ人生に舵を切った。瀧本自身はその軌跡を書き綴り、『寿司の「魔力」』(読書人)という一冊の本にまとめている。
彼が手がける事業の一つは、寿司職人のアイデアを活用した新商品開発の企画プロデュースだ。「寿司を通じて豊かなつながりを生み出したい」をミッションとしている。寿司職人の力を借りたい企業と、新たなチャレンジを志す寿司店のビジネスマッチングを手伝っている。マッチングを通し、新規商品を生み出し、新たな販路拡大を行い、寿司の可能性を広げる活動をサポートしている。瀧本は言う。
「たとえば、『王子サーモン』(本社・東京、本店・北海道苫小牧市)という人気のスモークサーモン専門店と、銀座の有名寿司店『鮨 きよし』をマッチングし、スモークサーモンのバッテラを売り出しました。僕が間に入り相性の良さを確信したので、一緒に商品化しましょうっていうことになりました」
スモークサーモンのリーディングカンパニーと、銀座の有名店の大将が、スモークサーモン用の「シャリ」から開発して、スモークサーモンのバッテラをつくる。そんなプロジェクトを瀧本は繋いだ。YouTube や Instagram で紹介するや、大きな反響を呼び、連日完売の大盛況となったという。
こうして、瀧本と話をしていると、「繋ぐ」という言葉が何度も出てくることに気づく。ただ、ちょっと意地悪な疑問もわく。「すでに自分たちの寿司店だけでうまく回っているから、別に、『繋ぐ』なんて言われなくても大丈夫です」という寿司店もあるのではないか。また「余計なことを」と思う店もあるのでは。そんな質問を向けてみると、瀧本は笑顔のままで首を横に振った。
「前提としてまず、行ったことのない寿司店にそういう話は持っていかないんです。毎日の食べ歩きの中で、寿司店で大将といろいろな会話をするんですけど、そこで関係性をつくり、お互い、話していて楽しいなっていう方とは連絡先を交換する。あとは、もともと僕の活動を見てくださっている方もいる。会話の中で、十人十色のキャラクターの大将と、あのタイプの案件、プロジェクトなら相性が良いかも、というのがわかってくるんです」
瀧本は、寿司店におけるそうした対話コミュニケーションのことを「sushinication(寿司ニケーション)」と呼んでいる。彼は「そこが一番重要なんです」と強調する。繋がるタイミングや相性は、瀧本自身の経験則をもとに、自分の考えをフィルターにして繋げていく。
「スモークサーモンを、江戸前の寿司職人として使うのはご法度、として断られた店もありました。『申し訳ないんですけど』みたいな。でも、いちおうご検討いただいて、建設的な会話をしています。『帰れ!』みたいな反応はないです」
今まで「食べ手」側か「料理人」側かの視点から語られていた寿司。これを、「食べ手」であり「ビジネスパーソン」である人が「繋ぐ」という立場から見つめ直す。百貨店のバイヤーや、コンシェルジュのような存在ともいえそうだが、その道を歩むことになった理由、ビジョンは、想像よりもかなりプリミティブのようだ。瀧本は語る。
「単純に寿司ファンなんです。食べるの大好き。美味しい。大将、最高。目の前の人との会話を楽しみ、『こいつ面白いな』『元気もらったな』とか、相手の懐に入るのが得意。職人さんって個性的な方が多いけど、関係性をつくる。いっぽう、食べるのが好きな人同士のコミュニケーションもある。『寿司が好き』というピュアさを起点にして、大将や生産者などの『つくり手』側の方とも、『食べ手』側の方とも、親交を深めていくことが多くなりました。繋がりがつくれれば、ハブになれるって感覚が生まれたんです。自然とその状態がいいと思いました」
「SUMESHI」を支える3つの柱
瀧本が立ち上げた「SUMESHI」の事業は大きく分けて3つある。1つ目は、地方の寿司店を紹介する「ポップアップイベント」など、オリジナリティ溢れるリアルでの特別体験を提供する事業。2つ目は「寿司に特化したSNSを使ったPR事業」。そして3つ目は、今後力を入れて開発を進めていく「寿司店パーソナライズマッチングアプリ」だ。
まず、1つ目の事業の人気コンテンツである、「地方の魅力を体験いただくプレミアムなポップアップイベント」は、全国の名店を食べ歩き、取材を続けるうちに瀧本が出合った個性豊かな店を東京に誘致して開催する。全国各地の素晴らしい食材や酒、そして名店の技術を、知ってもらえるように、まずは東京でそのきっかけとなるようにと企画している。寿司を通じ、都会と地方を繋ぐ「sushinication」を体現する人気コンテンツとして、大将だけでなく、生産者や日本酒の蔵元たちにも声をかけ、1~1.5か月に1回、ハイエンドな寿司マニアの限定メンバーを集め、都内で開催している。例えば和歌山の店の場合。
「和歌山に、こんなに美味しい寿司屋があったのか!」
「和歌山に寿司のイメージがなかったけれど、美味しい!」
「今度、旅行に行くとき、和歌山もその選択肢に入るね」
そんな声を増やすため、瀧本は津々浦々の寿司店をめぐり続ける。
2つ目の事業は、「寿司特化型SNSを用いた寿司店向けPR配信サービス」。新規オープンする寿司店や、既存の店など、認知度をより一層高めたい店からの取材依頼を受け、SNSでPRする。瀧本は語る。
「これは、ずっと趣味でやってきたことです。ずっと食べて発信してきたことが、ビジネスになるって本当に幸せです。ただ単に知られていないだけで、素晴らしいお店は、まだまだたくさんあるんです。趣味としての活動と、ビジネスとしての活動のバランスを保つことはすごく難しいですけど、そこはチャレンジポイント。試行錯誤しながら、自分の中での最適解を見つけていくプロセスに楽しみを見出すタイプなので、向いていると思う。サラリーマン時代も楽しかったですけど、今はもっと楽しいですね」
これだけ食べ歩いて、著書『寿司の「魔力」』を読めば唸らされるほど寿司に関する知識も豊富で、その知見や経験値を積んできたのなら「寿司店の経営は目指さないのか」とも思ってしまう。そう問うと、彼はまた首を大きく横に振った。
「まったくするつもりはないです。そうなると全ての寿司屋がライバルになってしまいますし、間に入ってフラットに中立的にやれるのが、結果的にオイシイなと思っているので」
いわゆる寿司評論家という立場とも違うのか。
「違います。それは嫌い。そう言っていただけるのは別に構わないんですけど、自分ではそう思ってない。なるべく『上から目線』で寿司を語らないように意識しています。評論、批評っていう言葉が、僕の中の尺度ではイケてる言葉ではない。自分が『いいな』って思ったものを伝えるけど、それが正義でもない。ゆとり世代とか関係あるかわかんないですけど、『みんなそれぞれ違って、みんないい』ということ。別に僕の考えがすべてではない」
酢飯には赤酢であるべきだ、だとか、王道を語る人はわかりやすく受け入れられるかもしれないけれど、そうではなく「寿司は無限である」ということを伝えたい、と瀧本は訴える。
「あとやはり、自分はまだまだ若いと思っているので、職人の方々に対するリスペクトの気持ちも忘れないようにしています。特に職人さんと近い距離になってくると、さまざまな苦悩を抱えていて、裏側を知っていくことになる。だから簡単に『まずかった』と思わないですし、『どんな寿司にもそれぞれの〝らしさ〟がある』というスタンスでい続けたいと思っています」
それよりも、他の寿司店と異なり、どこが素敵なのか、加点方式で瀧本は捉えていく。自分なりの感覚で毎回楽しみ、見出していく。「その方がポジティブでお得じゃないですか」。「食べログ」の点数が高い店、「ミシュランガイド」に掲載された店、イコール、自分にとって良い店であるとは限らない。
「みんな違ってみんないい。アートと一緒です。ピカソが美しいと思う人もいれば、モネが良い、岡本太郎が良いって人もいる。『落書きじゃん』と思う人もいれば、1000万円払ってでも買いたい人がいる。それと一緒」
自分だけの名店に出合えるきっかけを
食べ手にとっての相性がある。あくまで自分がどう思うのかが肝要だ。相性がいい店が見つかったとき、場所・価格帯も含め、「きっと恋愛と一緒だ」と彼は感じるという。十人十色の寿司店と、十人十色の寿司好き。いろんな美点・嗜好を持った同士が出会えるような「課題解決」に取り組みたい。そうした考えに至った瀧本が現在構想中(一部試行中)なのが、「寿司店パーソナライズマッチングアプリ」。今後、力を入れて開発を進めていこうとしている事業だ。自分だけの名店に出合えるきっかけをつくれる、自分好みの店に出合えるアプリだという。
「SNSでバズる寿司店が本当に良い店だとしても、自分の味覚とは合わなかった、っていう例は往々にしてあります。寿司は単価が高いことなどから『失敗できない』という不安を抱える人がそれなりに多い。そういう人々の不安を少しでも減らしたいと思っています」
有名店、それも都心部の店に目が行くことが多いかもしれないが、まだまだ世の中には名の知られていない名店が無限に存在する。アプリでは細かいジャンルから検索できるように整備を進めている。パイロット版を見せてもらった。たとえば1か月後、特別な記念日のために寿司店を探すなら──。タイプ、エリア、価格帯といったオーソドックスな検索から、しだいにマニアックに。「江戸前系」「地場の魚系」「独創的オリジナリティ系」。つまみも細かい。「つまみを多く出す店」「握りしか出さない店」「つまみと握りのバランスがいい店」。腹具合まで聞いてくる。「満腹になれる店」「腹七分」「腹五分の店」……。
「シャリ」はどうか。「赤酢」「白酢」「赤白中間」。ああ、なんて細かい。そう感想を漏らすと、瀧本はこう返してきた。
「シャリって、米の選定とか、酢の配合具合とか、唯一、背骨になるお店の精神が出るところ。土台がしっかりしていると、ネタが美味しくなるんです。使いたいネタはお店によって違うけど、シャリを味わえば、『こういう考え方なんですか!』って、一番大事な要素が見えてくる」
「米の硬さ」は──「硬い」「柔らかい」。「味」──「甘い」「しょっぱい」「酸っぱい」。「高級寿司」で「東京都中央区」で「ディナーが2万~2万5000円」、「赤酢のシャリ」で……。検索すると、出てくる出てくる。瀧本が出向き、こつこつと情報が整理された寿司店の中から、条件に合った寿司店が表示された。
そのうちの1店をクリックすると、店の詳細情報がさらに出てくる。使うネタが豊洲市場から仕入れた全国の魚なのか、それとも地場産を中心としているのか。店の雰囲気は賑やかなのか、落ち着いているのか。ご褒美で行くお店なのか、「日常使い」で行けるお店なのか。瀧本は語る。
「ビジュアルを見たらすぐにわかるように、写真は絶対必要です。『ガリ』もスライスか、ゴロゴロ系なのか。カウンターの形状はどうか。『ここまで詳しくなくても』って声も聞くんですけど(笑)、僕が補足でコメントを書いているんです。スペシャリテもそう。店の名物で、ぜひ食べてほしいものを書きそえる」
店を切り盛りする大将の情報まで載せている。年齢層、修業先、コメント。そして瀧本の編集した動画に飛ぶことができる。これは大変な労力のかかったアプリになりそうだ。現在、パイロット版のみで利用者はまだ約100人だが、かなり綿密な取材やアップデート作業がなければ、なし得ない業だろう。
「大変ですけど、これを全部データベースにしたい。今だと自分で検索するんですけど、これをAIとか機械学習を絡めさせ、『あなたは、こういう赤酢の店ばかり調べてるので、新着のこの赤酢のお店はどうですか?』。そういう世界観でマッチングをしていく。僕の中では『sushinication』の一つの解決策で、時間をかけてでも実現していきたいです」
寿司で地域おこし、寿司で子どもの食育、寿司職人の養成事業で人材派遣、世界進出……。「寿司」を絡めるだけで、新たなプランが無限に出てきそうだ。「寿司」の世界をこんなふうに横断して眺めることで、今まで気づかなかった未来が描けるかもしれない。携わる人たちの輪も拡がっていきそうだ。瀧本は瞳を輝かせて語る。
「寿司のコンテンツ力、ニッチのように見えて広いんです。いろんなものをかけ合わせると、無限の可能性がある。寿司にのめりこんで、それ1本で『寿司リーマン』っていうわかりやすい一貫性、統一感で進んでいたら、結果的にこうなっていたって感じ。魅力じゃなくて『魔力』なんですよ。人生変えさせられたので、寿司によって。儲からなきゃ意味ないので、楽しみながらもチャレンジし成長していきたい。事業化というのは今、趣味と事業との両輪でやっています」
「〝自分の好き〟を大切に生きていく」
それにしても、この、どこまでも「陽キャ」な瀧本は、どのように育ってきたのか。
「一人っ子で、そこが結構でかいと思います。『陽キャ』の自分と、ひとりになって内省したい『陰キャ』の自分が共存している感覚です」
小学校の頃からクラスの中心にいた。運動も勉強もでき、学級委員を務め、でも、ヤンキーな生徒とも仲良し。最初の転機は高校受験で挫折したことだった。
「自分は余裕で受かると思い込み、油断してしまって結果を出せなかった。だから一度自信を失ってしまって。だったら、自分が『やりきった』って言えるまでやろう、って一念発起した。それで早稲田大学に入りました」
大学生になってからの瀧本は、当時流行していた「街コン」のスタッフとして明け暮れた。周囲の社会人から可愛がられた。時間がある学生時代のうちに成し遂げようと、かつての東海道五十三次を一人で約500キロ歩く旅に出た。瀧本は振り返る。
「景色を見たいから、というより、自分で目標を設定したんです。京都の三条大橋から東京の日本橋までどうやってメンタルと体力をすり減らさずにゴールするか。ゲーム感覚。自分が楽しいことを追求したかった」
ペース配分を保てる徒歩行脚は、瀧本にとって楽勝だった。それならばと、今度は、ヒッチハイクに挑戦した。ヒッチハイクは、他人の力を借りないといけない。かつ、出会いを楽しめる。車を止めてもらえるようになるテクニック、車内に潜り込んでからのトーク術を磨いていった。当初の目的先より遠くまで乗せてくれた人や、食事や宿泊代をごちそうしてくれる人が増え始め、こちらもゲームのような感覚で、日本縦断を3回達成。累計400台の車に乗せてもらい、1000人の全国の人たちと出会った。この成功体験が、彼を現在の、寿司と人を繋ぐために歩む人生へと推し進めた。まだ32歳、でもその歩みは揺るぎない。彼は語る。
「根底にあるのは人と人のコミュニケーション。『まだこんな寿司あったんですか?』『そんな寿司フェチあったの!』みたいな。寿司店の方もそうですね。『マグロ、こんな食べさせ方あった?』みたいな。毎日飽きないし、もっともっといろんな人とコミュニケーションしたい。延々と食べても、毎日気づきがあって面白い。琴線に触れるところがある。究極にシンプルで究極に複雑なのが寿司。とんでもないコンテンツだって思います」
寿司の「魔力」に、瀧本は熱中している。だからロジックじゃない。インタビューだって「この回答ならウケが良いかも」などと奇をてらわない。思ったことをそのまま、熱情のまま伝えてくる。その押しの強さと、無邪気さが、ひとを惹きつけるのかもしれない。瀧本にそう伝えると、嬉しそうな顔になった。
「これからの時代は、『〝自分の好き〟を大切に生きていく』ことが幸せな人生の価値観になってくると感じます。推し活ブームも、そんな世相を表している現象の一つ。そういう時代背景があるので、たくさんの寿司好きの方を巻き込み、巻き込まれながら、『新時代の寿司の推し活』を提案し続け、世界中で sushinication の輪を広げていく。それが、寿司文化のアップデートに繋がれば最高です!」
「白甘鯛」から始まったこの日、瀧本は「新いか」「かつお」「まぐろ」「うに」「こはだ」「かんぴょう巻」「穴子」など計11カンを、じつに美味そうに平らげた。「このあと、霞が関でミーティングがあるので」と言い残し、颯爽と店をあとにした。大将が夜のコースの準備に取りかかる。「箱崎町すみと」の店内に、ふたたび和の静寂が訪れた。
瀧本伸哉(たきもと・しんや)
株式会社 SUMESHI 代表取締役。早稲田大学卒業後、株式会社リクルートキャリア(現・リクルート)にて勤務。2017年、当時25歳の時、石川県の名店「太平寿し」を訪れたことをきっかけに寿司に魅了される。2020年、「寿司リーマン」として Instagram で食べ歩きの発信を開始。全国のおすすめ店を紹介する YouTube チャンネルも運営する。2024年、初の著書となる『寿司の「魔力」』(読書人)を上梓。現在は株式会社 SUMESHI を設立し、起業。寿司の可能性に着目した事業を複数展開している。