滝沢カレンさん 第2回 インタビュー連載「私の本」vol.10 

『カレンの台所』で読める唐揚げやロールキャベツのレシピが、滝沢さんにしか書けない不思議で独特な世界観だ、と話題になっています。滝沢さんにとって「料理」と「書くこと」には共通点があるとか。どんなところが似ているのでしょうか。


 皆さんのなかでは使っていない言葉だったとしても、自分的にはそのまんまの気持ちを書いているだけなんです。鶏を高温の油で揚げているときの音は、「きゃぴきゃぴ」言っているように私には聞こえるから。

 1億人いれば1億人の音があるはずで、私にはそう聞こえるから、わかってもらえなくてもいいと思いつつ書いているところもあります。

 私は兄弟のいないひとりっ子で、幼い頃は虫とか土とか、そういうものとよく遊んでいたんです。友達作りもすごく下手だったから、おうちの庭で何時間も何時間もひとりで過ごしていました。

 たとえば虫になにか別の設定をして、想像のなかで遊ぶんですね。あの頃は石も泥も、植物たちも、雨の日も晴れの日も、自分のまわりにあるもの全部が口を持っているんじゃないかと感じていました。その感覚が、今回の本にも表れていると思います。

 でも、もしあの本に書いた物語をもう一回書けと言われても、二度とできません。あの瞬間に頭のなかにあったストーリーだから、同じ唐揚げでも、きっとまた違う物語になると思います。

失敗しても誰にも怒られない

 文章を書くときに使うのは、いつも携帯のメモです。考えながら書くというよりは、料理を作ったときに感じたことを思い出しながら、集中して一気にやります。手を止めるのは最後の文に「。」をするときで、もし途中少しでもつまったら、逆に書くのをやめてしまいます。

 この本には、普通の料理本のように食材の分量を書いていません。料理をするとき、私は計量しないからです。もちろん初めは何が入ってるか知らなかったので、レシピを見ました。今はこれとこれを使えばいいとわかるので計量しないし、これを混ぜれば違う味になるのではと、逆に新しい味を楽しんだりします。

 そうやってなんでも好きにできてしまうのが料理のいいところで、見本とかセオリーはないですよね。料理だけは失敗しても誰にも怒られないし、迷惑がかからない。何回も挑戦できるし、自由なものだと思います。

 たとえばお仕事は失敗してはいけないし、そこまでの自由はないですよね。テレビのバラエティ番組ならMCとか先に歩いている人がいて、その人の船に乗るようなイメージです。自分の感覚というよりは、リーダーがいてそこに従うような気持ちです。モデルとして雑誌の撮影をするときも、どういう服で、どういう風に撮りたいかを編集さんに聞いて、それを生かしてやります。

 でも料理と書くことだけは人に迷惑がかからないし、人を傷つけたりもしないので、そこだけは自由だと思っているんです。

読書感想文はご褒美だった

 じつは私は小さいときからよく本を書いていて。誰も使わない紙を2つ折りにして、ホチキスでとめて本みたいにして、そこに絵と物語を書くんです。

 そんな子供だったから作文の宿題とか、夏休みの読書感想文はまったくツライと思わなくて、うれしくて、ご褒美のような感じでした。

 いまは朝日新聞デジタルの「好書好日」というサイトで、「滝沢カレンの一歩先へ」という連載をやらせていただいています。

 最近では安部公房『砂の女』とか、綿谷りさ『蹴りたい背中』とか、本のタイトルと登場人物、大まかなあらすじだけを編集者さんが教えてくれて、そこから想像を膨らませてひとつの物語を書いていくんです。

 この連載はもう3年ぐらいやっていて、最初は全然大変じゃありませんでした。なんでこんな楽しい企画くれるの、と思っていたくらいで。

 そうやって最初の1年はどんどん書けたけれど、2年目ぐらいから難しさを感じるようになったんです。私は28年間物語を書いていますが、幅広さはないから (笑)。いつも魔法が使えたり、ワープしちゃったり、不思議な人が出てきたりと、いきなり場面が変わるんです。魔法を使って、それで終わりって片付けちゃったりとか。だからいつも現実味のない小説になってしまいます。

 でも逆に、現実を書く楽しさというのがずっとわからなかったんです。現実は生きてればいいじゃん、と思っていたので、生きていて味わえないファンタジーの世界を書くのが好きでした。

 ただ大人になって冷静さを持つようになると、ただ好きなことを書いているだけではダメということに気づいたんですね。だから今は、楽しさよりも苦しさとの戦いです。

 でも、私にとってはとてもいいトレーニングだと考えています。確かに大変ですけど考えているときは楽しいし、書いたあとも楽しかったと思えるし。

 この機会がなかったら毎日仕事が忙しくて、大人になって書くことを止めてしまっていたんじゃないかと感じます。

 もし今、モデルとテレビ出演だけだったら、自分は何でもできるというような感じで、いい訳とかをするような人になっていたんじゃないかなって。それで何もしなくなっていたと思います。

 でも書かなければいけないということになると、必要に迫られて本を読んだり、映画を観たりして、いろんな世界があると知ることができます。自分にとってはそれがすごくプラスになっているし、すごくいい状況だと思うんです。

(次回へつづきます)
(取材・構成/鳥海美奈子 写真提供/サンクチュアリ出版)

滝沢カレン(たきざわ・かれん)
1992年東京生まれ。2008年、モデルデビュー。現在は、モデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。主なレギュラー出演番組に『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)、『沸騰ワード10』(日本テレビ)、『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)、『ソクラテスのため息~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』(テレビ東京)など。


「私の本」アーカイヴ

◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第113回
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