【注目度の高い本屋大賞】2016年のオススメ作品を紹介-後編-

近年とみに注目度が高い本屋大賞。書店員さんがぜひ読んでほしいとおすすめする作品を選ぶ賞です。前回に続き、2016年の本屋大賞6位から10位の作品について、簡単にあらすじをご紹介します。

前回の記事、「【注目度の高い本屋大賞】2016年のオススメ作品を紹介-前編-」にて、1〜5位の受賞作品をご紹介させて頂きました。今回は前回に引き続き、2016年の本屋大賞6〜10位の作品をご紹介させて頂きます。

6位.『王とサーカス』米澤穂信著

王とサーカス
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4488027512

2001年にネパールで実際に起きた王族の連続殺人事件を題材にした物語です。主人公は新聞社に勤務している太刀洗万智。新聞社を退社してフリーライターとなった万智は、仕事でネパールへと向かいます。そして、ネパールの王宮内で王が皇太子に射殺されるというショッキングな事件が起きます。社会は混乱し、情報が錯綜する中、万智は事件について調査を開始します。すると取材をした関係者が密告者として殺されてしまうことに。ジャーナリストとして真実を追求するために奔走する万智の想いと、犯罪や復讐心が絡み合い、事件はさらに複雑になっていきます。意外な事実を知った万智が出した結論は…。

二〇〇一年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…。

7位.『戦場のコックたち』深緑野分著

戦場のコックたち
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4488027504

第154回直木賞の候補にもなった作品です。1944年、第二次世界大戦の最中。主人公のティムは愛国心が強く、志願兵として戦地へ行くことになります。しかし自分は戦いに向いていないと感じたティムは、特技兵としてアメリカ軍のコックとなります。ティムの周りで起こる小さなミステリー。それを親友のエドが中心となって解き明かしていきます。章ごとに、戦地で見つけた小さな謎をティムとエド、仲間たちで解明していくというストーリー。謎解きと共に、ティムの成長していく姿や戦争の残酷さも描かれています。

一晩で忽然と消えた600箱の粉末卵の謎、不要となったパラシュートをかき集める兵士の目的、聖夜の雪原をさまよう幽霊兵士の正体…誇り高き料理人だった祖母の影響で、コック兵となった19歳のティム。彼がかけがえのない仲間とともに過ごす、戦いと調理と謎解きの日々を連作形式で描く。

8位.『流』東山彰良

流
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062194856

第153回直木賞の受賞作品です。物語の舞台となるのは1970年代後半の台湾。主人公の祖父は中国出身で台北市で布屋を営んでいました。ある日祖父が何者かに殺害され死体となって発見されます。祖父を殺した犯人は誰なのか?祖父の死の謎とともに、主人公の成長していく様子が描かれます。成長の過程で強くなっていく、自分は何者なのかという問い。家族とは?アイデンティティとは?ものすごいスピードで物語が進んでいきます。当時の台湾の様子や空気感がリアルに伝わってくる表現力の素晴らしさに圧倒されます。

1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ!友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。

9位.『教団X』中村文則著

教団X
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4087715906

教祖の松尾が率いる謎の集団と、沢渡という教祖が率いる教団Xというカルト集団についての物語です。ライトな雰囲気でゆるいつながりの集団と絶対的な教祖が全てを支配する教団Xという対照的な2つの団体が描かれます。暗い過去や悩み、いろいろな思いを抱えた人が教団に集まってきます。主人公の楢崎は突然姿を消した恋人を探しているうちに、松尾の率いる団体にたどり着きます。実際に彼女が所属していたのは教団Xだと知らされ、楢崎は沢渡に会うことに。宇宙や量子論を人間の生死と絡めたり、宗教団体の話かと思えば、科学から政治の話題となり、幅広いテーマや思想が詰め込まれた超大作となっています。

謎のカルト教団と革命の予感。自分の元から去った女性は、公安から身を隠すオカルト教団の中へ消えた。絶対的な悪の教祖と4人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。

10位.『火花』又吉直樹

火花
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4163902309

人気お笑いタレント又吉直樹のデビュー作品。第153回芥川賞を受賞したことで大きな注目を浴び、240万部を超える大ヒット作品となりました。売れないお笑い芸人の徳永と、徳永が尊敬する先輩芸人である神谷の物語です。徳永が神谷に弟子にして欲しい、と頼むところから物語は始まります。人付き合いが苦手で不器用だけれどお笑いには人一倍まっすぐな神谷。そんな神谷に共感と憧れを持っている徳永。少しずつ人気が出てくる徳永のコンビに対して、お笑いに対するこだわりが強すぎるゆえに仕事が増えない神谷のコンビ。2人は次第に疎遠になり…。お笑い芸人による作品らしくユーモアもたくさん盛り込まれています。

お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。人間存在の根本を見つめた真摯な筆致が感動を呼ぶ!

最後に

直木賞の候補作品となったものや芥川賞の受賞作品もランクインしています。話題の本ばかりなので、お見逃しのないようにチェックしてみてください。

過去には「創立メンバーが語る、本屋大賞のこれまでとこれから」の記事にて、運営側の熱い思いや、本屋大賞の歴史などについても触れていますので、こちらも併せてチェックし、本屋大賞に注目してみてはいかがでしょうか。

▶関連記事:創立メンバーが語る、本屋大賞のこれまでとこれから

初出:P+D MAGAZINE(2016/11/07)

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