【注目度の高い本屋大賞】2016年のオススメ作品を紹介-前編-

近年とみに注目度が高い本屋大賞。書店員さんがぜひ読んでほしいとおすすめする作品を選ぶ賞です。2016年の本屋大賞1位から5位の作品について、簡単にあらすじをご紹介します。

1位.『羊と鋼の森』宮下奈都著

羊と鋼の森
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4163902945

2016年の本屋大賞受賞作品。主人公の外村が、ピアノの調律師を目指しながら人としても成長していく過程を描いた作品です。高校で目にした調律師の仕事、その時に聞いたピアノの音に魅了された外村はピアノの調律師になることを心に決めます。外村は専門学校で学び楽器店で働きながら調律について考えます。いい音とは何か、美しい音とは何か。どうすればいい音を作り出せるのか問い続ける外村。外村はその答えを見つけることができるのでしょうか?一途にまっすぐに音と向き合う青年の姿が爽やかに描かれています。

2位.『君の膵臓をたべたい』住野よる著

君の膵臓をたべたい
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4575239054

著者のデビュー作。ネットの口コミなどで話題となり「キミスイ」という流行語も生まれました。膵臓の病気を患っていながらも、クラスの人気者で明るく振舞っている山内桜良。桜良の日記を拾って病気のことを知ってしまったクラスでも目立たない存在の僕。今まで接点のなかった桜良と僕は、急接近していきます。恋愛とも友情とも違う不思議な関係の2人。読み進めるうちに、タイトルの意味が明らかになっていきます。純粋で爽やかな気持ちにしてくれる青春小説となっています。

3位.『世界の果てのこどもたち』中脇初枝著

世界の果ての子どもたち
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062195399

戦時中に高知から満州に連れてこられた主人公の珠子。珠子はそこで朝鮮出身の美子、横浜からやってきたお嬢様の茉莉に出会います。国境を越えた友情で結ばれる3人ですが、戦争が終わりバラバラに。戦争孤児となった珠子、差別を受ける美子、空襲で家族を失った茉莉。日本、中国それぞれの国で、国の都合や戦争に翻弄された3人の女性の運命。そして戦争にも負けない強い絆で結ばれた3人の友情。実際に中国や韓国を訪れて、数十人の方にインタビューを行ったという著者。戦争を知らない世代の描く戦争。戦争とは何だったのか、考え抜かれた著者の思いが込められた作品となっています。

4位.『永い言い訳』西川美和著

永い言い訳
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4163902147

長年連れ添った妻をバス事故で亡くした人気作家の衣笠幸夫。妻に愛情を感じられなくなっていた幸夫は悲しんでいる夫を演じます。その後、一緒にバスに乗っていて亡くなった妻の友人の子供の面倒を見るようになり、幸夫の気持ちに変化が生じるようになります。そして徐々に妻の死と向き合ようになった幸夫は、妻を十分に愛せなかったことを後悔し始めます。家族を失った人たちはどのようにその後の人生を生きていくのか。誰にでも起こりうる家族との別れ、その時に人はどんな希望を持てば悲しみを乗り越えられるのでしょうか。

5位.『朝が来る』辻村深月著

朝が来る
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4163902732

養子縁組で子供を迎えることにした夫婦。中学生の時に妊娠出産し、子供を夫婦に託すことになった女の子。ある日夫婦のもとに、子供を返して欲しいという電話がかかってきます。子供を返してくれないならお金を払って欲しい、そうしなければ養子であることをバラすという脅迫まで。実際に会ってみると、数年前にあった子供の母親とは全く違う女性だった。彼女は本当に母親なのだろうか…。養子を迎えた家族の姿を通して、家族のあり方や血のつながりについて疑問を投げかけます。

最後に

何か面白い本はないかなと探している方は、本屋大賞の入賞作品から読み始めてみてはいかがでしょうか。

初出:P+D MAGAZINE(2016/11/06)

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