〈第４回〉浜口倫太郎「ワラグル」スピンオフ小説芸人交換日記

2021/08/06

「ワラグル」スピンオフ小説

崖っぷち漫才師がお笑いコンテストを
目指す笑いと涙と戦慄の物語
「ワラグル」
刊行記念スピンオフ短期集中連載！

６月１３日　ｆｒｏｍ　瀬名

　……ラリーさん、これはないですわ。よし太が読んでるってわかってたらこんなこと書きませんよ……まあでもこの日記のおかげで、あのネタができたんですもんね……複雑な気分ですが、ありがとうございます。

　ワラグルですか。俺もその言葉は胸に響きました。俺もワラグルになります。死ぬ気で練習して、このネタを自分達のものにします。

　もう日記を書いて送信する必要ないとのことなのでほっとしました。これ以上よし太に日記読まれたくないですからね。

　あとはＫＯＭ優勝を目指すのみですね。俺たち頑張ります。

１２月２３日　ｆｒｏｍ　よし太

　ラリーさん、やりました。僕ら、僕らＫＯＭ優勝しました。テレビで見ててくれてましたか？　ラリーさん、ほんまにほんまにありがとうございます。

　ラリーさん、あんたは日本一の放送作家やで。僕が高く評価します。

１２月２３日　ｆｒｏｍ　瀬名

　おい、よし太。おまえ何先送信してんねん。俺が一番にラリーさんにお礼をしたかったのに。

　ラリーさん、ありがとうございます。ほんとに、ほんとに優勝できるやなんて思いませんでした。

　ラリーさんに付いてもらうまでは、優勝なんて夢に見ることもできなかったんで。優勝して号泣したとき、脳裏にはラリーさんの姿を思い浮かべていました。

　ちょっと密着のカメラを止めてもらって書いているので時間がありません。ラリーさんに付いてもらっていることは絶対の秘密ですからね。

　またお礼の続きは直接会ったときに言わせてください。本当に、本当にありがとうございました。

　あなたは最高の放送作家です。

（つづく）

「ワラグル」スピンオフ小説芸人交換日記アーカイヴ

『ワラグル』
浜口倫太郎

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　浜口倫太郎（はまぐち・りんたろう）

1979年奈良県生まれ。漫才作家、放送作家を経て、『アゲイン』で第５回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビュー。著書に『シンマイ！』『廃校先生』『22年目の告白─私が殺人犯です─』『ＡＩ崩壊』『お父さんはユーチューバー』など多数。

著者の窓　第41回 ◈ 浜口倫太郎『サンナムジャ　ヤンキー男子が K-POP に出会って人生が変わった件』

　焼き肉店のツケ100万円を払うため、アイドルグループを結成して、コンテストの賞金獲得を狙うヤンキー高校生・春井戸貫太。しかしメンバーは一癖も二癖もある男子生徒ばかりで……。浜口倫太郎さんの『サンナムジャ　ヤンキー男子がK-POPに出会って人生が変わった件』（小学館）は、ひょんなことから K-POP を始めることになった

浜口倫太郎『サンナムジャ　ヤンキー男子がK-POPに出会って人生が変わった件』

ヤンキーアイドル　「今度息子が韓国のオーディション番組に出るので、見てくれませんか？」ある日、知人からこんな連絡をもらった。聞けば彼女の息子さんはＫ―ＰＯＰアイドルを目指していて、韓国で練習生をしているそうだ。　その彼が、今度大型のオーディション番組に出演する。各国からアイドル候補生を集めて競わせ、最後に残った者をデビ

◎編集者コラム◎ 『いつも二人で』浜口倫太郎

この文庫は、単行本時に「ワラグル」というタイトルで刊行されました。今から２年以上前、その時は営業チームの発案で、「幸福のチェーンゲラ」作戦を敢行。具体的には、著者名、タイトルを伏せて、新刊のゲラを熱い手紙とともに書店員の方々にお送りし、もし読んで気に入ったらお知り合いの書店員仲間のひとたちにバトンを繋ぐようにして薦めて

〈第５回〉浜口倫太郎「ワラグル」スピンオフ小説芸人交換日記

２月２７日　ｆｒｏｍ　瀬名　……あれから十年後（なんかこんなんあった方がいいかなと思いまして）。ラリーさん、お久しぶりです。瀬名です。ラリーさんに送っていた日記を十年ぶりに読み返してみて、あの頃のことが鮮明に頭をよぎりました。優勝する前のときって、俺もう芸人辞めようかと思うほど追い込まれていたんですね。何か当時の切羽詰まった気持ちを思い出しました。

〈第３回〉浜口倫太郎「ワラグル」スピンオフ小説芸人交換日記

５月２８日　ｆｒｏｍ　瀬名　……わかりました。じゃあ周りのスタッフに牧野のことを訊けという指示にだけは従います。でも俺はもうラリーさんに付いてもらわないと決めたんで。