『汝、星のごとく』凪良ゆう/著▷「2023年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR
凪良ゆうと「星」の話
2017年、凪良ゆうさんの文芸デビュー作『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)の売り上げ初動は残念ながら芳しくありませんでした。発売から2年が経ち、凪良さんに「もう一度チャンスをください! あなたは絶対スターになる人です!」とお願いし、ある書店さんともう一度この本を売り出そうと仕掛け始めました。売り場の大展開を見て凪良さんは泣いてくれました。「ありがとう、もう一度講談社で一緒に本を作りたい」と。それから打ち合わせを重ね、凪良さんにとって、初めての王道にして勝負作の恋愛小説を作ろう、と決めます。
それから1年ほどが経ち、2020年『流浪の月』本屋大賞受賞のあの日、初めて日本に緊急事態宣言が発令されました。凪良さんは、本来ならば贈呈式に出席しているはずの日、寂しく過ごされていたそうです。寿がれるべきその日は、テレビで当時の首相の厳しい面持ちが繰り返し放送され、僕たちが愛する物語は現実の厳しさに追いやられました。
だからこそ、そんな状況に負けるものか、と、僕たちは地道に物語を紡ぎ続けます。
「せっかく一緒に作るなら、河北さんとしか作れない物語にしたい」と凪良さんは言ってくれ、僕の地元の愛媛県今治市を舞台にするため、緊急事態宣言の狭間に瀬戸内の島へと取材に向かいました。そうして、2022年。ついに『汝、星のごとく』が脱稿……。一読後、号泣した僕は心に決めました。編集者人生を賭けてこの本を少しでも多くの読者に届けよう、そしてできることならば、今度こそ、本屋大賞の贈呈式に連れて行ってあげられる作品にしたい、と(コロナ禍前までの、ノミネート作家と応援書店員さんが集まる贈呈式は、本当に素敵な空間だったのです!)。
本書の発売後に再訪した愛媛県では多くの取材陣に迎えていただき、地元出身の編集者が手掛けた本、ということで、恐縮しつつも一緒に取材も受けました。凪良さんは「河北さん、地元のスターですね!」なんて笑っていましたが、全然違います。凪良さんと、凪良さんと一緒に作ったこの『汝、星のごとく』こそが、僕にとっての一番星でした。
この作品がこれからも多くの読者の「星」にもなってくれますように。
──講談社 小説現代編集部 河北壮平
2023年本屋大賞ノミネート
『汝、星のごとく』
著/凪良ゆう
講談社
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