☆スペシャル対談☆ 角田光代 × 西加奈子 [字のないはがき]と向きあうということ。vol. 1

☆スペシャル対談☆ 角田光代 × 西加奈子  [字のないはがき]と向きあうということ。vol. 1

 なんて豪華な組み合わせなんだ! 2019年初夏、小説丸編集部では驚きの声があがりました。作家の角田光代さんと西加奈子さんが、一冊の絵本を制作したというのです。
 脚本家としてもひろく知られる作家・向田邦子さん()のエッセイを原作に、角田さんが文章を綴り、西さんが絵を描く──絵本『字のないはがき』は、3人の直木賞作家による、時代を超えた奇跡のコラボレーション作品です。
 7月23日、クレヨンハウス東京店で催された角田さんと西さんの対談を、小説丸は徹底取材。笑いあり、サプライズありの当日のもようを、たっぷりとおたのしみください。

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vol.1  じゅうあつ。

 

司会者の方(以降、司会)
こういったかたちの対談は十数年ぶりということですが、おふたりがお会いになるのは久しぶりですか?


西加奈子さん(以降、西)
これ、わたし取っていいですか?(とマイクを卓上スタンドから外す)
この絵本のお食事会以来ですよね? 6月にお会いしました。でも、お仕事関係なく、ふだんいっしょに飲ませていただいたりとかもあります。


司会
『字のないはがき』がどういうふうにできたか、というお話をうかがえればと思うんですけれども……。


角田光代さん(以降、角田)
あの、……編集者のひとからファクスが来まして、「字のない葉書」()を絵本にしてくださいって書いてありました。
向田和子さん()がそうおっしゃっているとファクスに書いてあったんですけど、編集者の方ってたいてい、向田和子さんたってのご希望で、とか、本人がそう言ってると言えば断らないだろうと思って、そういうことを書くひとが多いんですね。だからそう書いたんだろうなと思いながら、ちょっとこのお仕事は、荷が重いけれども、すごく断りづらい。断りづらい、というのは、やっぱりわたしは向田邦子さんの大ファンだからなんです。それで、書いてはみます、と何年も前に言ったのがはじまりです。

角田光代さん


西
何年も前なんですか?


角田
うん、何年も前。3年ぐらい前かな。


西
ふーん。わたしは、「字のない葉書」を角田光代さんが絵本の文章にして、それの絵を描いてくれませんかっていうご依頼をメールでもらって……。


角田
向田和子さんと角田光代さんが……って(笑)?


西
そう! 断るわけないやん!ていう。でも、先輩やから断れないとかじゃなくて。(会場のスクリーンに映る『字のないはがき』の書影を指して)この並びで! 向田邦子さんの「字のない葉書」を角田さんが絵本にされる、っていうその〝絵〟を、だれかほかの方がやられてたら、たぶんめちゃくちゃ嫉妬してたので、そういう意味でも断れなかった。
ご依頼は、たしか2年前に来て、ちゃんとやります、ってお返事しました。
 

角田
そうなの。文章が書けたのが去年で……。
 

西
そっか、そうなんですね。
 

角田
なんで、そんなに時間がかかったのかっていうと……。
エッセイ自体は、みなさんご存じだと思いますけど、ひじょうに短いエッセイで、ただわたしは、絵本て書いたことがないんですね。絵本の翻訳みたいなことはしたことがあるんですけど、もとがあるとはいえ、日本語の絵本を自分で書いたことがなくて、どう書くのがいいのかわからない、というのがひとつ。あと、ちょうど2015年から、わたし、『源氏物語』をやれって言われていて、ちょっと『源氏』の荷が重すぎて……。
 

西
うんうん。
 

角田
1、2年ほんとになんにもできなかったんですよね。それで、なかなか絵本に手がつけられないし、どうしようといつも考えながら、やる時間がないし。実作業に入るまでにひじょうに時間がかかったっていう理由があって、書き出すのが遅かったんです。
 

西
書かれたテキスト、何パターンかあったって前に聞いたんですけど。
 

角田
わたしね、……ほんとに心の弱い人間なので。
 

西
あははは(笑)。

角田さんと西さん


角田
これだ!とかできないんですよ。それでどうしたらいいのかと、4パターンつくって。もとはいっしょなんですけどね、「ですます」調と、向田邦子さんの原文に近い「である」調と、いろいろ4パターン書いて、編集者の方に渡して、編集者の方と向田和子さんといっしょに読んでくださって、これがいい、というのがあったんだと思います。
 

西
わたしはそのテキストしかいただいてなくて。で、もう台割もほぼ……。
 

角田
え、ダイワリ? コマ割り?
 

西
そうそう、そうそう! このページにはこの文章、このページにはこの文章……こういうふうに文章を分けたらどうでしょうって、もう決まったものをいただいて、そのとおりにしました。
なんていったらいいんだろな、……〝受け身〟じゃないんだけど、角田さんも知ってくれてると思うんですけど、ふだんのわたしは結構ぐいぐいぐいぐい、グイっと前に出るタイプなんですけど(笑)。今回ばかりは、ぜったいに〝自分〟を入れんとこう、邦子さんと角田さんおふたりの邪魔はせぇへん!と決めてやりました。
 

角田
わたしには4パターン書く、ていうのがあるけれど、絵の場合は本番じゃなくて、下書きの段階でいろいろ描いてみて、これ!ってなるんですか? それとも、これ!って浮かんだそのままが、本番?
 

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子ども時代に見ていたテレビドラマをのぞけば、向田邦子作品に出会ったのは二十二、三歳のころだ。このときすでにご本人はこの世の住人ではなかった、ということもあって、この作家は私には最初からものすごく遠い存在だった。平明、簡素でありながら、叙情的な文章で綴られる、暮らしや記憶の断片は、私の知らない大人の女性の世界だった。