☆スペシャル対談☆ 角田光代 × 西加奈子 [字のないはがき]と向きあうということ。vol. 4

☆スペシャル対談☆ 角田光代 × 西加奈子  [字のないはがき]と向きあうということ。vol. 4

角田
そうですよね。
ただ、ちょっとおもしろいなとわたしが思うのは、この絵本は、さっきお話ししたとおり、こういうオファーが来まして、こういうオファーが来まして、とそれぞれで作業してるんですけど、一回もみんなで途中で集まって話し合ったりとか、してないんですよね。
 

西
あ、たしかに! ミーティング一回もないですね。
 

角田
「こういうつもりで、やります!」みたいなのがなくて、ひとりがひとりの仕事をし、そしてそれを、編集者の方と和子さんにチェックしていただいて……。西さんとわたし、友だちなので、制作中に会うこともあったんですけど、なんか、聞いちゃいけない気がして。
 

西
気ぃつかってくれてはったんや(笑)。
 

角田
なんだろ、聞いたらほんとにいけない気がして、「絵本の絵、進んでる?」とか、ぜったい言っちゃいけない!と思って、なんにも言わなかった。
 

西
そうですね。
 

角田
西さんの絵が、このくらい進んでます、とかいうのも知らなくて、忙しいのかなぁ、とか思ってて、それである日「できました」って言われて、びっくりですよね。

角田さんと西さん


西
和子さんからも、こうしてくださいっていうのも、いっさいなくって。ほんとうに、全員が静かに、メッセージもなんにもなく(苦笑)。
 

角田
粛々とね。
 

西
そうですね、こういう企画にしては不思議なシチュエーションかもしれない。
 

角田
本ができるのはもっと先になる気がしていて、西さんてひとは、忙しいし、聞けないし、いつできるんだろなって。だから、本になったときはびっくりしちゃって、「本になった!」って思って……。
 

西
静かーに、本になりましたよね、たしかに。
 

角田
静かに、本になりました。

字のないはがき


西
そういうメンバーでした。本ができてからやっとみんなでお会いして、ごはん食べて、あのときこうやったっていう話をするという。
 

角田
うん。
 

西
大きいプロジェクトやと思うんですよ。そのわりには、すごく静か。のちのち編集の方がちゃんとつないでくれたっていうのはあるけど。たしかに、おもしろいですよね。
 

角田
なにも共有していないのに、なにか自然と、なんとなくなにかを共有したっていうのは、やっぱり、向田邦子さんという作家の書かれたものが軸にあって、わりとそこに、個々で思いを添わせたというところがあるのかなぁ、といま話しながら思いました。

角田光代さん


西
もし邦子さんがご存命で、このエッセイを絵本にしたいの?ってなったときも、たぶん、なんにもおっしゃらないと思うんですよ。「こうしてくれ」だとか。エッセイとか小説から〝書く姿勢〟が見えるひとで、それだけでも人柄とかめちゃくちゃ素敵なひとや、ってわかるから、角田さんが会いたくないっていうのもわかります。だからってさ、平気で会えるひとには失礼なんですけど(笑)。
 

角田
あははは(笑)。

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◇自著を語る◇ 角田光代『字のないはがき』

子ども時代に見ていたテレビドラマをのぞけば、向田邦子作品に出会ったのは二十二、三歳のころだ。このときすでにご本人はこの世の住人ではなかった、ということもあって、この作家は私には最初からものすごく遠い存在だった。平明、簡素でありながら、叙情的な文章で綴られる、暮らしや記憶の断片は、私の知らない大人の女性の世界だった。