岸田奈美「藤子・F・不二雄 生誕90周年企画発表会に行ってきた!」
〝 作家なら、頭の中を机に広げておきなよ。 〟
ある大先輩から教わった。
自分の中にある好きなもの。大切なもの。書きたいもの。奥へ引っ込んでしまうから、いつでも見えるように並べて、しんどい時も戻ってこれるようにって。
なぜに今、思い出したかっていうと。
藤子・F・不二雄先生の机は、まさに、そんな机だったから。
恐竜、飛行機、昆虫、志ん生の落語テープ……。
ここがドラえもんたちが生まれた机!
次の瞬間、わたしは、
地面にベタ伏せていた。
係員さんが「人間がひとり消えたと思いました」って怯えてた。
椅子……!
F先生の椅子を見る、チャンスッ……!
型番は、型番はどこだ。首が悲鳴をあげている。これ以上曲げたら戻れない気がする!
ええい、首の一本や二本。
あった!
椅子、ジロフレックス社の82パサールだった。
同じやつ、買おう。夢がまたひとつ増えた。
取り乱してしまいましたが、わたくし、なんと。
「藤子・F・不二雄 生誕90周年 企画発表会」に、やってきました〜〜〜〜!
同じ小学館から本を出版させてもらっただけという、ほっそいほっそいツテをですね、たぐってたぐって。ウナギ漁かなってぐらい、たぐって。ドッコイショー!ドッコイショー!
って感じで、入れてもらった。
この恩、22世紀まで忘れない。
ドキドキで会場へ入ると、壁いっぱいの複製原画なども……。
もうね、この時点で感無量やけども。企画発表で、三回、涙が出た。