岸田奈美「藤子・F・不二雄 生誕90周年企画発表会に行ってきた!」 


冒険にあこがれた日が、今年もやってくる

90周年のいろんな企画や新作が、ドドドと発表されるらしい。

「あっ!」

「藤子・F・不二雄 生誕90周年企画発表会」レポ

ドラえもんだ〜〜〜!
パーマンだ〜〜〜〜!
Qちゃんだ〜〜〜〜!

ところでお察しのように、こんな場に来るのは初めてのわたし、一切ズームできない単焦点のカメラを携えてきてしまった。遠目でしか撮れない。こんなに好きなのに。

「藤子・F・不二雄 生誕90周年企画発表会」レポ

以降、運動会の場所取りに失敗した親のような味わいの写真でお送りします。

三人の身長差、いいねえ……。Qちゃんの方がドラえもんより短足だと思ってたけど、ようく見ると、オバケだから布の下に足が隠れてるから、隠れ長足だねえ……。

開会宣言で、ドラえもんの咳払いは「おっほん」じゃなくて、 「ぎゅへん!」 なんだねえ……。

この世には、生で見なけりゃわからんことが山ほどあるんだねえ。

立体感のある推しを浴びている。まだ始まったばかりなのに、情報量が多い。

「まず、来春公開の映画ドラえもんについてです!」

おおっ!

「ドラえもんたちの、次なる冒険は……」

MC役の声優・かかずゆみさんが読み上げた〝冒険〟の二文字で、すでに涙出た。早すぎる。 絶対にこの涙、いまじゃない。

でもさ、そうなんだよ、〝冒険〟なんだよ!

物心ついた時から、この胸に残るドラえもんたちの記憶がワッと押し寄せる。

映画や物語である前に、あれは紛れもない冒険だった。海底、銀河、魔法界……危険に満ちた世界に、何度もぶつかりながら、彼らは乗り越えてきた。ドラえもんたちの冒険に、励まされて生きてきたのだ。

 大人になっても、冒険を楽しみにしていいんだ。

ずっと大切に隠していた自分のやわらかい部分に触れられた気がして、不意打ちで涙が出た。あかん、あかん。こんな序盤で泣いてる場合か。

気をしっかり……

「物語のカギを握る歌姫・ミーナのゲスト声優を発表します!」

 止めたはずの涙が、頬を伝った。 物語のカギを握る。こんなにワクワクする言葉があるだろうか。ドラえもんたちはいつも冒険の中で、新しい仲間と出会い、絆を結んでいく。映画に一度しか登場しない仲間たちのこと、今でもずっと、覚えてる。

そうか、会えるんだ。 来年も。 当たり前だったはずのことが、改めて目の当たりにすると、ドラえもんの冒険を毎年見せてもらえる奇跡に大感謝が押し寄せる。

「藤子・F・不二雄 生誕90周年企画発表会」レポ

ミーナ役は、俳優の芳根京子さんだった。

四方八方からフラッシュが炊かれて、シャッターが鳴る。

ドラえもんが 「この写真、僕にもください!全部の方向からほしいです!」 と言って、会場を笑わせていた。ドラえもんがリアルタイムで会話をしているという凄まじさのほうが気になって、わたしは笑っている場合ではなかった。涙を流しながら拍手していた。

映画ドラえもん のび太の地球交響楽」は、 2024年3月1日(金)公開。歴代作品の中で、地球がタイトルにつくのは初めてのはず。

テレビシリーズで、日常のドラえもんたちを多く描いてきた脚本家の内海照子さんが、音楽という日常と非日常をどうつないでくれるのか、楽しみで楽しみで、仕方ない。

SNSで話題になったけど、予告編で、 〝のび太が吹くヘタクソなリコーダーで爆笑する教室の中、ひとりだけ笑ってない出木杉くん〟 が一瞬映ってるのも、ドラえもんたちの日常が鮮やかに浮かび上がってた。

「藤子・F・不二雄 生誕90周年企画発表会」レポ

会場には、指揮者姿のドラえもんもいた。ピョコッとあがった右足が、なんか、すごく愛しかった。

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