『あなたが殺したのは誰』刊行記念 まさきとしか × 黒木瞳スペシャル対談【前編】
三ツ矢の母親の事件はこれから明かされる
黒木
三ツ矢とコンビを組む田所も、魅力的な相棒です。経験値と能力は足りなくても、事件解決への熱量だけは大きい。何かと三ツ矢に振り回されて気の毒ではありますが、無邪気さと青臭い性格が、愛くるしいですね。三ツ矢との温度差が絶妙で、ベストのコンビネーションだと思います。
まさき
田所はいい人なんですけど、刑事としてはダメ。彼にはもうちょっと、しっかりしてほしいです。新人とはいえ、30歳になりましたからね。
黒木
『あなたが殺したのは誰』では、割と成長したのではないでしょうか? 田所の発見が、事件を解決する重要なきっかけにつながります。
まさき
刑事としての成長の一歩には、なったでしょうね。
黒木
第4弾以降では、田所もさらに成長してくれると期待します。
いずれ三ツ矢のお母さまの事件についても明かされると想像しますが、どうなんでしょう?
まさき
読者の方にもよく訊かれるのですが、今後の展開はまだ決まっていません。『あの君』を書いた当初は、こんなにたくさんの方に読んでいただけてシリーズになるとは思っていなくて、三ツ矢の母親の事件の詳細を、特には考えていなかったんです。けれど私自身、そろそろ知りたいと思っています。
黒木
まさきさんご自身が?
まさき
書くと決めたらきっと、予想外の事実に行き当たるでしょう。明かされたとき、三ツ矢がどんな反応をするのか。彼の心のいちばん深い部分に封印されていたものが、きっと放たれると思います。
黒木
田所も、変わることになるのでしょうね。あのパスカルが慟哭するのかもしれない。それまで出なかった三ツ矢の人間らしさが垣間見られる、重要なお話になりそうですね。
まさき
想像しただけでも、涙ぐみそうです。
黒木
三ツ矢はお母さまへの思いを、心の奥の方に封じているんですよね。お札をいっぱい貼って、心を外に開いていない状態にしているというか。真相が明かされるごとに、お札はひとつずつ剥がれていくでしょう。
まさき
三ツ矢は母親の事件があった中学2年生のときの、暗くて狭いところに閉じこめられている閉塞感を抱えたまま生きています。お札で封印されているという表現は、とてもしっくりきます。
黒木
いつか解放されるんですよね。
まさき
三ツ矢に関しては、そうあってほしい。封印が解かれたとき、彼がどんな刑事に、そしてどんな人間へ変わっていくのか。読者の方と同じ気持ちで、私自身も楽しみにしています。
黒木
三ツ矢&田所刑事シリーズは、まだまだ続きそうですね。
まさき
今後も書き続けていけたらなと思っています。
後編はコチラ
『あなたが殺したのは誰』
著/まさきとしか
まさきとしか 写真右
1965年生まれ。北海道札幌市在住。創作教室に通い、小説執筆の道へ。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞を受賞。著書に『完璧な母親』『大人になれない』『いちばん悲しい』『レッドクローバー』『玉瀬家の出戻り姉妹』など多数。『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』と続く、三ツ矢&田所刑事シリーズは現在52万部を突破するベストセラーとなっている。
黒木 瞳(くろき・ひとみ) 写真左
俳優。宝塚歌劇団に入団2年目で、月組娘役トップとなる。テレビ、映画、舞台で活躍。これまでの映画作品において、WEIBO Account Festival 2022 最優秀女優賞受賞。2023年6月公開映画『魔女の香水』では主演を務めた。近年は映画監督として4作品を手がけたり、舞台演出や朗読劇の企画・脚本などのエンターテインメントの世界で幅広く活躍中。