大島真寿美

大島真寿美『たとえば、葡萄』
どこからだって扉はひらく 小説とはふしぎなもので、うまれる時にはうまれてしまう。ここ数年、江戸時代の道頓堀界隈に脳内トリップしつづけ、あちらの世界に搦めとられ、あまりにも、あまりにも、どっぷりと浸りきっていたものだから、もう、江戸時代の小説しか書けなくなっちゃったかも? と危惧していたりもしたのですが、『結 妹背山婦女
思い出の味 ◈ 大島真寿美
「大島小姐~、許留山、つぶれちゃったらしいですよ、知ってます?」 「知ってる~。泣」  これは、約二十年ぶりに繋がった友人とのメッセージのやりとり。  許留山、というのは香港スイーツのお店の名前。私が
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 ツタのモデルはわたしの祖母だ。わたしが13歳のときに亡くなったその人が、作家だったとはまったく知らなかった。わたしの知っている祖母は、いつも茶の間に座っていて、夏は扇風機、冬はストーブの横に座ってじっとテレビを見ていた。母にくっついて祖母の家へ行くのはたいてい週末の午後で、テレビの画面には相撲か、古い洋画か、B級のホ
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 みなさんは自分の両親の半生を、詳しく知っていますか? 祖父母のことは? 曾祖父母のことは? 会ったことのない遠い身内だと、知っていることといえばどこで生まれたかくらいで、その人となりまで知っているなんてことは稀かもしれません。大島真寿美さんの文庫『空に牡丹』は、つい一族誰もが語りたくなってしまう静助さんというご先祖様
大島真寿美さん『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』
 江戸時代、大坂の道頓堀で活躍した人形浄瑠璃の作者・近松半二。彼を主人公にした『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』は、文楽(人形浄瑠璃)の世界をまったく知らない読者でもグイグイと引き込まれてしまう長編小説です。繰り返し描き続けてきた「物語る人」というモチーフ、そして人形が喜怒哀楽のドラマを繰り広げる文楽の魅力について、著者の