有馬美季子『花蝶屋の三人娘』

有馬美季子『花蝶屋の三人娘』

水茶屋の麗しい三人娘、裏の顔は仇討ち屋?


 江戸時代の水茶屋と申しますと、現代のカフェのようなところでございます。私が描いた水茶屋はお酒も出しますので、ラウンジやクラブの趣もあるかもしれません。

 

 昨年のGWが終わった頃でした。

 敏腕編集者のN氏から、「王子様のようなイケメンと、お姫様のような美女たちが活躍する〝キラキラの時代小説〟を、恥も外聞もなく書いてください!」とのお話をいただきまして、「えー、どうしましょう……」と戸惑いつつも乗り気になり、登場人物と物語がどんどん固まっていきました。

――錦絵にも描かれる、水茶屋の麗しい三人娘。でも訳アリで、それぞれ親の仇を捜しながら、裏では仇討ち屋をしているというのはどうかしら? 野放しになっている悪人たちを、お仕置きしてやるの。で、三人娘が普段働いている水茶屋の名前は、絶対に<花蝶屋>がいいわね。

 ピーチティーを味わいながら想像を膨らませ、物語が生まれました。

 三人娘が主人公ですが、中心となりますのはお蘭で、清楚で生真面目な19歳。色に例えれば、名の如く白。お藤はお色気たっぷり、熟れ頃の21歳。色に例えれば、紫。お桃は甘えん坊でお転婆な17歳。色に例えれば、ピンク。

 彼女たちに惚れ込み、花蝶屋に足繁く通っている殿方たちも、揃って外見も心も二枚目ばかり。

 お蘭を贔屓にしているのは、定町廻り同心。南町奉行所の狼と呼ばれる、ワイルドで勝気な勝之進。お藤を贔屓にしているのは、廻船問屋の大旦那、ダンディな悠右衛門。お桃を贔屓にしているのは、版元の若旦那、はんなりとした京也。

 三人娘もそれぞれ彼らが愛しいのですが、親の仇討ちを終えるまでは胸の痞えが下りず、なかなか思いを受け入れることができないのです。仇討ち屋など勇ましいことをしながらも、乙女心を揺らします。

 仇討ち屋<闇椿>の面々も曲者揃いです。

 元締めの辰雄は元同心で、勝之進の先輩。鍼灸医の桂雲は、腕はよいけれど無類の女好き。花蝶屋の主人でもあるお稲は、元盗賊でとにかく強い。美男双子の岡っ引きの六助と七弥は、ともに女よりも男が好きで、三人娘にも憎まれ口を叩いたり。

 第1巻では、皆で、人気絵師殺しの真相を突き止めていきます。三人娘たちの華やかな活躍を、お楽しみくださいませ。

 

 男女ともに濃いキャラクターが続々登場する『花蝶屋の三人娘』。さて皆様は、登場人物たちの中で、いったい誰がお好みでしょう?

 ご指名は花蝶屋にて、承っております。

 時代小説がお好きな方も、今まであまりお馴染みのなかった方も、是非是非、お気軽に遊びにいらしてくださいね!

  


有馬美季子(ありま・みきこ)
2016年、『縄のれん福寿 細腕お園美味草紙』で、時代小説デビュー。21年に、「はないちもんめ」「はたご雪月花」の両シリーズで、第10回日本歴史時代作家協会賞文庫シリーズ賞を受賞。おもな著作に「お葉の医心帖」シリーズ、「深川夫婦捕物帖」シリーズ、「小鍋屋よろづ公事控」シリーズなどがある。

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花蝶屋の三人娘

『花蝶屋の三人娘』
著/有馬美季子

◎編集者コラム◎ 『宙ごはん』町田そのこ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド vol.187 紀伊國屋書店新宿本店 竹田勇生さん