◎編集者コラム◎ 『有限会社さんず スーサイド・サポート・サービス』降田天
◎編集者コラム◎
『有限会社さんず スーサイド・サポート・サービス』降田天
「死にたい」「●●すぎて死ぬ」「死ぬほど●●」
誰でも一度は口にしてしまったことがあるだろう、「死」を使った言葉。強調のためのレトリックであれ、もちろん、文字通りのこともあれ──その言葉の裏には必ず何らかの「強い気持ち」があることは、間違いないと思います。
降田天さんの『有限会社さんず』は何らかの「死にたくなるほど強い気持ち」から始まる物語を描いた連作短編集です。発売前から話題沸騰となった近刊『少女マクベス』、日本推理作家協会賞〈短編部門〉を受賞した「偽りの春」を含む「狩野雷太」シリーズなど、人の強く巨大な感情をミステリやどんでん返しに巧みに絡めてきた降田天さんにとっては、究極の題材と言えるかもしれません。
第一話は、アルバイトの女性が自殺未遂し、周囲からの冷たい目線や激務に苦悩する、コンビニの雇われ店長。
第二話は、愛する人のため、一刻も早く行方不明になりいという若い女性。
第三話は、希少な蝶のコレクションをふさわしい人に譲りたい、それから蝶の毒で死にたい、という蒐集家。
第四話は、妻と子供のため、借金を返済するための保険金がほしい元半グレの居酒屋店主。
第五話は、赴任先の同僚から日常的に性暴力を受けるようになってしまった上、慕われていると思っていた生徒に裏切られた教師。
それぞれの「死にたい」に呼応するように、ふと手元に届けられる一枚の白いカードは、とある業者への連絡手段でした。現れるのは若い男と、中年の男の二人組。彼らの目的は、そして彼らをも巻き込む「死にたい」気持ちの行く末は?
必ずや、予想だにしていなかった場所に連れていかれることでしょう。
何の変哲もない白いカードに二次元コード、というシンプルなモチーフを見事、印象的で意味深なカバーに仕上げてくださったのは、イラストレーターの神田ゆみこさんと、デザイナーの大原由衣さん。
さらに、すずきさちこさんには第一話「コンビニエンスパーソン」のあらすじ漫画を描いていただきました。こちらでお読みいただけますので、ぜひお楽しみください。
──『有限会社さんず スーサイド・サポート・サービス』担当者より