伽古屋圭市『死霊探偵』

『きさらぎ駅』と『キサラギ』
本作『死霊探偵』は、数行程度の企画案からはじまりました。3案送ったうちのひとつで、それぞれの案の冒頭にはコンセプトを3つの言葉にまとめていました。
・田舎 × おにぎり × おばあちゃん
・旅 × 秘境 × グルメ
・幽霊 × オカルト × ミステリー
個人的に「秘境グルメもの」が本命かなぁと思っていたんですが、担当編集者からの返事は「オカルトミステリーでお願いします」と。そっちかぁ! という驚きはありつつも「ころがし次第でおもしろいものになりそう」という予感はありました。
霊能力者である主人公の職業(おもての仕事)が「エセ占い師」であることは、この時点で考えていたものです。
本格的に「オカルトミステリーもの」の構想を練りはじめ、記憶を失った幽霊をバディとすることや、主人公(エセ占い師)の前職がシステムエンジニアであることなどを決めました。オカルトとはまったく無縁の人生を送ってきた、すべてを論理で考える徹底した合理主義者です。
本作では死霊の正体や動機、目的を探る調査パートが見どころのひとつになります。ここはひたすらロジカルに進み、ときにターゲットにハッキングを仕掛け、霊体であるバディの能力を最大限活かし、違法すれすれ(というか違法)なこともします。ここは我ながらおもしろく書けたと自負していますし、設定の勝利だなとも思っています。
そして本作は短編形式なので、各話にバラエティを持たせることも意識しました。
悪霊退散! という王道展開はもちろん、死霊の目的がまるでわからない謎の事件も起きますし、感動的なラストを迎える話もあります。けれどいちばんのお気に入りは『きさらぎ駅』を舞台にした密室推理劇の回ですね。
気づく人はすぐに気づくと思うんですが、これ、都市伝説の『きさらぎ駅』と映画『キサラギ』をかけたんですよ。作中にはちょっとしたオマージュネタも仕込まれています(密室推理繋がりで映画『12人の優しい日本人』ネタも)。発想のきっかけはダジャレみたいなものでしたが、手応えを感じられる出来になりましたし、お気に入りの回になりました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。本作に少しでも興味を持ってもらえましたら、お手に取っていただけますと幸いです。
あなたの読書ライフが豊かなものになりますように。
伽古屋圭市(かこや・けいいち)
1972年大阪府生まれ。第8回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞した『パチプロ・コード』で2010年にデビュー。『からくり探偵・百栗柿三郎』『散り行く花』『断片のアリス』『あおぞら暮らし』、シリーズに「かすがい食堂」「猫目荘のまかないごはん」「クロワッサン学習塾」など著書多数。






