むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第7回

むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第7回
 お 題 
今年こそ変わりたい! 変わるぞ私! と意気込む時に読む本

 私はとにかくメンタルが弱い。毎日一ミリでもいいから強くなりたいと願っている。そのため気づいたら、自分を変えるビジネス書や心理書の棚前によく佇んでいる。

 今回のお題をいただき、「自分が変われるお告げかもしれない!」と思った。もうこれはガツンと自己啓発の王道、スティーブン・R・コヴィー氏の『7つの習慣』、カーネギーの『道は開ける』などを読むしかないと意気込んでいた。

 だがしかし……! 弱メンタルの私には、タイトルを見ただけでまぶしく、読む前に心がぽきりと折れた。「あと百年くらい修行してから読もう」とすでに後ろメンタルになっている。

 そんなこんなで選書が決まらず、人文書コーナーをゾンビのように徘徊していた時、ある一冊の本が目に留まる。若松英輔さんの『弱さのちから』だった。

 帯に書かれていたこの一文、

「弱さを肯定するところから生まれるもの」

 私の時が止まった。

「弱さにも力がある……!? 今の私にはこの本しかない!」

 と勝手に運命を感じた。

 読み始めて、びっくり! 目から鱗が百枚以上落ちた。弱くてもいい、立ち止まってもいい。本書に「頑張れ」という言葉は一つもなかった。自分の弱さと向き合うことが力になる。弱さを知ることが誰かの支えになる。一文一文が心の奥底まで沁みた。

 これから自分がどんな人間として生きていきたいのか、教えていただいた一冊。とても素敵なお題をくださった六本松 蔦屋書店の山田さんに感謝すると共に、ぜひみなさんの心を変えた一冊も教えていただけたら嬉しい!

弱さのちから

『弱さのちから』
若松英輔
亜紀書房

宗岡敦子(むなおか・あつこ)
紀伊國屋書店福岡本店勤務。文学担当。気になった本は、ジャンル問わず何でも読みます!


【次のお題】
何度も読み返している、本が好きになった想い出の本
【答える人】
ジュンク堂書店 滋賀草津店 山中真理さん
 
本連載は、「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。〇〇部分は、前号執筆した方が、次の執筆者に対して提案します。


〈「STORY BOX」2023年3月号掲載〉

著者の窓 第24回 ◈ 穂村 弘『短歌のガチャポン』
「推してけ! 推してけ!」第32回 ◆『神無島のウラ』(あさのあつこ・著)