【童貞による童貞のための小説No.1が決まる】激闘!童貞ビブリオバトル

童貞が童貞におすすめしたい“童貞文学”をプレゼンし、No.1童貞文学を決める「童貞ビブリオバトル」を開催。白熱したイベントの模様をレポートします!

 

世の中の男性は、2つに大別することができます。そう、A.童貞である人間と、B.童貞でない人間です。

2種類の人間

童貞(A)は非童貞(B)になることはできても、非童貞(B)は童貞(A)にはなれません。両者の関係は不可逆です。

 

不可逆

童貞を卒業された方は、自分がかつて童貞であったときの気持ちなどとうに忘れ、さも、生まれたときから非童貞であったような顔をして生きていらっしゃることと思います。

しかし、本当にそれでいいのでしょうか? 人は時々、引き出しの奥にしまった大切なアルバムを見返すように、童貞だったあの頃の気持ちを思い出し、初心に帰る必要があるとは思いませんか?

 

そうだ。童貞を集めて、「ビブリオバトル」を開こう

忘れてしまったかつての記憶を思い起こさせ、味わったことのない感情さえも私たちに疑似体験させるもの――それは、文学

童貞文学をきめよう

そこで今回は、童貞界の精鋭である3名の男たちにこれぞ童貞のバイブルという小説を3冊紹介してもらい、“童貞文学”のナンバーワンを決めるイベントを開催。名付けて、「童貞ビブリオバトル(※)」です!

合わせて読みたい:【ダメ人間No.1を決めろ!】現代文学“ダメ人間”ビブリオバトル

 

“童貞文学”とはなにか?

そもそも、“童貞文学”とはなんでしょう。
P+D MAGAZINE編集部は、こんな定義付けをしました。

童貞文学とは1

この3つの定義を満たしている文学作品を“童貞文学”と呼びます。
それでは、童貞による童貞のための文学紹介ショー、童貞ビブリオバトル開幕です!

登壇者&ルール紹介

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2017年2月某日、P+D MAGAZINE編集部に童貞界の精鋭たちが集合しました。

 

【登壇者】

登壇者

Hさん
某編集プロダクションで働く会社員。自称「硬派な童貞」。
Sさん
東京大学教養学部4年生。好きな食べ物はカタ焼きそば。
Yさん
東京大学工学部4年生。最近妊娠する夢を見た。

ビブリオバトル ルール

熾烈な闘いとなった童貞ビブリオバトル。その様子を、動画つきで完全レポートします。果たして、童貞文学No.1と、No.1童貞の称号は誰の手に……!?

 

Hさん:全童貞が共感! 武者小路実篤『お目出たき人』

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『お目出たき人』あらすじ

お目出たき人
出典: http://amzn.asia/564BQBe

1911年発表の武者小路実篤による小説。主人公の「自分」が、近所に住む鶴という女性に一方的に恋をする様子が描かれる。「自分」は5年間もの間、言葉を交わしたこともない鶴に恋い焦がれ、「自分」と鶴は夫婦になるものと信じている。
ある日1年ぶりに偶然鶴を見かけた「自分」は、やはり彼女と結ばれるのだという気持ちを強くするが……。

【ダイジェスト動画】

【童貞ビブリオバトル】武者小路実篤『お目出たき人』 from P+D MAGAZINE on Vimeo.

 

Hさん:僕が紹介する本はこちら、武者小路実篤の『お目出たき人』という作品です。これは1911年に出された本で、今から100年前の童貞を扱った本です。

主人公は26歳の童貞。学者の、童貞。近所に住む、鶴(つる)という学生に恋をしている童貞なんですよ。

学者の童貞

Hさん:この本の何がいいかというと、主人公が恋をしているんですけど、相手の鶴さんと喋っているシーンというのが作中に一回も出てこないんですね。一回も出てこずに、ただただ主人公の内なる気持ちだったり欲だったりが、100ページくらい綴られている。

 

会場:童貞っぽい……。

 

Hさん:そうなんです、童貞なんですよ!
僕が共感する点がふたつあって。ひとつ目が、ささいな共通点を見つけて、「俺とこの人、相性いいんじゃないか」と思っちゃうこと。これ、童貞ではないみなさんはあまり共感できないと思うんですけど。

鶴さん(主人公の好きな女学生)が卒業するとき、昔は順位が出たんですよ。「何位で卒業します」みたいな。で、鶴さんは4位で卒業するんです。主人公はそれを見て誇らしげに思うとともに、そういえば、自分が卒業するときは下から4番目で卒業していたと思い出して「よっしゃ!」って喜ぶんです。

童貞あるある「すぐに自分のことを好きなのではないかと思い込む」

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Hさん:共感できるもうひとつは、「自分のことを好きなんじゃないか」って、ささいなことで思っちゃうこと。
たとえば作中に、偶然会った鶴さんが目を合わせたときにちょっと頬を赤らめて俯いたみたいな描写があって。「これは確実に俺のことが好きだ」って思うんですよ。

僕、2週間前によく行く喫茶店で本を読んでたんですけど、帰り、お釣りがちょっと間違ってたんですね。で、「お釣り間違えてますよ」って言って、40円くらいプラスで返ってきたんです。
そのとき、女性の店員さんが手のひらにお釣りを乗せたあとに下からめっちゃギュっと手を握ってくれたんですね。その瞬間、「あっこの女の人、絶対俺のこと好きだ」と。

俺のことが好きだ

Hさん:で、そのまま僕もちょっと握ってみたらニコっとされたんで、「ああ、やっぱりな」と思って帰ったんですけど。
作品の話に戻ると、「好きな人がいる、でも付き合えない」みたいな関係性って、すごく普遍的なものだと思っていて。それが100年前の作品でも、今読んでも共感できるというか、自分の体験に置き換えて楽しむことができるんですよ。「馬鹿だな」と思いつつも、「俺もそんなことあるな」と思ったりして、惹きつけられる。でもこの作品を読んでも、僕は童貞を卒業できないだろうなと思いました。

<会場からの質問>

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会場:童貞キャラというか、自分を童貞のまま貫き通そうとしたきっかけはなんですか。

Hさん:大学2年のときに、周囲に童貞を告白しまして。いじられるようになるんですね。「そういう店に行けばいいじゃん」って言われるんですけど、そこで反発するわけです、「馬鹿野郎」と。「俺は硬派な童貞だぞ。舐めんじゃねえ」と。

会場:(苦笑)

Hさん:「俺は純愛で童貞を卒業する」と啖呵を切ったことがきっかけですね。

 

(次ページ:夏目漱石『三四郎』&大江健三郎『われらの時代』の童貞エピソードを披露!)

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