【茨城県民マンガ】だっぺ帝国の逆襲 〈第1回〉県民の、県民による、県民のための体操!? 漫画/佐藤ダイン 監修/青木智也
埼玉と群馬が映画やマンガのヒットで調子づき、栃木が餃子といちごとラーメンの力でなんとなく浮上するなか、「魅力度最下位」という残念なレッテルを貼られたままの茨城。しかし茨城王(イバラキング)こと青木智也と漫画家の佐藤ダイン、茨城を代表する進歩的文化人(笑)のふたりが敢然と立ち上がり、茨城人ですら知らない茨城の魅力を発信する! 今日からあなたは茨城の虜になる……かも。 [隔週掲載]
46都道府県民に告ぐ!
我が茨城県が、「都道府県魅力度ランキング」(株式会社ブランド総合研究所)で
7年連続魅力度最下位!?
ゴジャッペ(でたらめ、おバカ)言ってんじゃねぇよ。
伸びしろが日本一っつーことだっぺ!
茨城王(イバラキング)こと青木智也と漫画家の佐藤ダイン、
茨城を代表する進歩的文化人(笑)のふたりが敢然と立ち上がり、
小学館のP+D magazineを無理矢理ジャックして、
愛する郷土の本当の魅力を詳しく紹介すっかんね!
映画が大ヒットしてふんぞり返っている埼玉県民!
ちょっと漫画が流行ったからって調子こんでる群馬県民!
おめぇらが泣いて悔しがるような
すんごいとごろや、うんめぇものを
教えてやっから覚悟しとげよ!
茨城が天下を取る日も、そう遠ぐはねーがんな。
あ、そうだ、忘れてた。栃木県民もがんばれよ(笑)
マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる“県民も知らない茨城の秘密”「だっペディア」の番号と対応しています。
第1回
マンガに登場するローカルな用語などを、徹底解説!
これであなたもイバラキアン(茨城人)の仲間入りだ!
■(※1)ジョイホン【固有名詞】
茨城県発祥の巨大ホームセンター「ジョイフル本田」の略称。すべての店舗は、広さの基準が「東京ドーム○個分」となっており、常軌を逸している。最大は「ニューポートひたちなか店」の東京ドーム5.1個分で、もはや買い物ではなくハイキングに行くレベル。下手をすると遭難しかねない。
生鮮食料品店(やはり茨城の食品スーパー「ジャパンミート」と協力)はもちろん、ショッピングモールやシネコンまで備える店があり、茨城県民は中高生だけでなく大人でも、ヒマがあればついフラフラ入ってしまう。
ちなみに、私、茨城王が作っている『茨城弁Tシャツ』や『ごじゃっぺかるた』は、ジョイホンに併設されているJOYFUL-2でも絶賛販売中。
■(※2)関東鉄道【固有名詞】
東京からの通勤圏(片道1時間30分程度)に、いまどき電化されていない路線がある。これはマンガにあるとおり、茨城県石岡市に気象庁の地磁気観測所があって、直流の(普通の)電車を走らせると観測に支障があるためだ。
関東鉄道と常磐線とが接続する取手は上野まで40分、つくばエクスプレスと接続する守谷にいたっては秋葉原までたったの32分。それだけに、取手~水海道間は幹線扱いで、気動車にしては珍しく複線化されている。
ちなみに関東鉄道は、名称からして関東全域で鉄道を走らせているイメージだが、いま存続しているのは、取手~下館の常総線(25駅51.1km)と龍ケ崎市内を走る竜ヶ崎線(3駅4.5km)のみ。竜ヶ崎線も気動車で単線だ。
蛇足ながら、龍ケ崎市、竜ヶ崎線と、「りゅうがさき」の表記が違うのは、私のせいではない。市の名前は「龍ケ崎」、鉄道や高校は「竜ヶ崎」、警察署やJAは「竜ケ崎」の文字をそれぞれ使用しているのだ。統一したほうが何かと効率的だと思うけど、いいかげん=「ごじゃっぺ」なまま残しておくところが、まさに茨城らしかっぺ!
■(※3)ごじゃっぺ【形容詞】
もともとは「いいかげん」な人を形容する言葉だったようだが、「あほ、ばか、まぬけ」のような否定的表現全般に使われている。ただし、関西の「アホ」に近く、本気でけなすのではなくて、もっとライトなニュアンスだ。
ちなみに「でれすけ」は元々「だらしないやつ」だが、ごじゃっぺと同じような意味
で使われる。茨城弁で「ごじゃっぺやってんじゃねえよ!」(バカなことやってるんじゃないよ)とか「おめはちっとでれすけだな!」(おまえは少しおバカだな)と罵られても、言葉の裏にどことなく愛情や温かみが感じられる――はず。
上級者は「ごじゃ」や「でれ」といった略語も使いこなしている。使い方としては「バカ!」「アホ!」のように、「ごじゃ!」「でれ!」とひとこと単体で使われるケースが多い。
■(※4)僕はなまっていたのか【感嘆詞】
茨城では、①自分のなまりに無自覚、②茨城の言葉と他県の言葉の違いに無自覚、という「無自覚イバラキアン」がとっても多い。茨城弁が方言としては比較的標準語に近いため、「普段話している言葉はすべて標準語」だと思い込んでいることが原因だ。県民は「だっぺ」や「ごじゃっぺ」が茨城弁であることぐらい知っているが、「(布団や洗濯物を)こむ(=取り込む)」や「だいじ(=大丈夫)」、「あおなじみ(=青あざ)」などは、「みんなが普通に使っているから標準語だっぺ!」と思っている。
また、ご存知のとおり茨城は民放テレビ局がない唯一の県で(え、知らなかったって!? じつはそうなんです)、県全体をカバーするFM局も存在しない。東京中心の情報を浴びながら育ってきた茨城県民は、「どうせ俺たちは脇役だっぺ。茨城はてーしたごどねえべ」と知らず知らずのうちに都会へのコンプレックスを植え付けられている。
そういうわけで、このマンガの主人公であるダイゴも、自分がなまっていることに気づかず、なんとなく東京にあこがれて一度は上京した典型的な無自覚イバラキアンなのだ。
■(※5)茨城県民体操【固有名詞】
茨城には「県民の歌」と「県民体操」がある。とくに県民体操がある都道府県は珍しく、茨城を含めて12道県のみだ。
この県民体操、伴奏の音楽が昭和初期のラジオのようでやたら古臭く、おどろおどろしいいうえに、とにかく動きが激しい。とくに終盤の「天突き運動」は、体操というより過酷なスクワットで、県民は必ず「天突き運動がつらかった」というエピソードで盛り上がる。YouTubeにもアップされているので、ぜひ一度ご覧あれ。
県民体操の作者は、1936(昭和11)年のベルリン・オリンピック(体操競技)に出場した日立市の出身の遠山喜一郎さん。当時、ラジオ体操(現在のラジオ体操とは別のもの)が評判が悪くて使われなくなったので、茨城県体操協会長でもあった遠山さんが県民の健康増進のために考案したとか。1949(昭和24)年のことだ。
だっぺ帝国の逆襲は隔週掲載です。
次回は12月23日(月)に公開予定です。
プロフィール
■漫画:佐藤ダイン(サトウ/ダイン)
1984年、茨城県大子町出身。芸術系の大学在学中から漫画誌に投稿を続ける。サラリーマン生活、漫画家のアシスタントを経て、『桃色な片想い』(『月刊!スピリッツ』)でデビュー。2016年、『僕に彼女が出来るまで』が『ふんわりジャンプ』で連載、単行本化される。
■監修:青木智也(アオキ/トモヤ)
1973年、茨城生まれ。東京でサラリーマン生活を経験するも、茨城にUターン。フリーのライター、コメンテイター、ラッパーとして活動を続ける。WEBサイト「茨城王(イバラキング)」を立ち上げるかたわら、常総ふるさと大使、いばらき統計サポーター、茨城県まちづくりアドバイザーなどとしても活動。ラヂオつくば等でパーソナリティも務める。
著書『いばらぎじゃなくていばらき』(茨城新聞社)が13刷、4万部を超える大ヒット。
初出:P+D MAGAZINE(2019/12/09)