【茨城県民マンガ】だっぺ帝国の逆襲 〈第4回〉茨城、独立準備完了だって!? 漫画/佐藤ダイン 監修/青木智也
交通事情を調べていた3人茨城空港に向かう。首都圏第3の空港として赤丸急上昇中の施設だ。ところがその途中で「茨城ダッシュ」の現場に遭遇。それをやり過ごしたと思ったら、今度は「トラクター渋滞」……。それもこれも、茨城の風物詩なのだ!
ナマズバーガーを食べに霞ヶ浦にGO!
県民が誇る日本で2番目に大きな湖「霞ヶ浦」。
ただ、多くの県民の思いとは裏腹に、
魅力や知名度は「ちっとばっかし」見劣りしてっかも(汗)
どでかい琵琶湖、うなぎの浜名湖、霧の摩周湖なんかに比べると
これといったウリがないような……。
い、いや、そーたことあんめよ!
霞ヶ浦周辺は日本一のレンコン産地。
そういや、これほど蓮田が広がる景色は日本でココだけだっぺよな。
東岸の行方(なめがた)では、霞ヶ浦のナマズやコイを使った
ご当地ハンバーガー「行方バーガー」が味わえっと~。
ワカサギ漁もさかんで、漁獲高は国内第5位。
そもそもワカサギを「公魚」と書くのはなんでか知ってっけ?
麻生藩(現在の行方市)が幕府へ献上したことがはじまり。
つまり、将軍家御用達の魚っつー意味なんだかんなっ。
あよ! 霞ヶ浦グルメを味わいに来たくなったっぺ~!
※あよ=ねぇ、ほら
マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる“県民も知らない茨城の秘密”「だっペディア」の番号と対応しています。
第4回
マンガに登場するローカルな用語などを、徹底解説!
これであなたもイバラキアン(茨城人)の仲間入りだ!
■(※1)霞ヶ浦
茨城県の南部にある「日本一の湖」。え? 日本一の湖は琵琶湖だって!? そりゃ面積のことだっぺ。霞ヶ浦は「湖岸線の長さ」が日本一なのだ!
とはいえ、県民が思っているほど全国的な知名度は高くない。富士山に次いで高い北岳がほとんど知られていないのと同様、面積2位の霞ヶ浦の知名度といったら、それはもう茨城の魅力度ぐらい低いのが実情である(泣)。
かつては泳げるほど水がきれいだったが、いま泳ごうと思ったら(たとえ夏でも)相当な気合が必要だ。
■(※2)観光客のためのスポット
湖を楽しむなら、定番は土浦港にあるラクスマリーナの遊覧船。高さ日本一の牛久大仏も見えっぺよ。お子さま連れなら行方市にある水のテーマパーク「霞ヶ浦ふれあいランド」なんていうのもある。
さらに、「かすみがうら市水族館」もあっかんね! 湖の魚を展示する地域密着型水族館だっぺよ。 えっ、小さすぎる? そ、それは霞ヶ浦が大きすぎるから目の錯覚じゃね?
■(※3)つくば霞ヶ浦りんりんロード
土浦市の土浦駅と桜川市(旧岩瀬町)の岩瀬駅を結んでいた「筑波鉄道」が1987年に廃線になり、その路線跡を活用して自転車道路「つくばりんりんロード」がつくられた。さらに、2016年には霞ヶ浦の湖岸道路とつながって「つくば霞ヶ浦りんりんロード」に。国土交通省が定めた「ナショナルサイクルルート」3つのうちのひとつで、この先、北浦の湖岸にも延伸を予定している。
「ナショナルサイクルルート」の他のふたつは「しまなみ海道サイクリングロード」と琵琶湖を一周する「ビワイチ」。知名度では若干負けているような気がするが、なんの、がんばっぺ!
■(※4)茨谷園(いばたにえん)
東京・渋谷109で人気の「おにぎりBar渋谷園(しぶたにえん)」。おにぎりにお酒、タピオカミルクとわらび餅ドリンクなどを提供するこの店が、2019年7月、土浦にタピオカ専門の姉妹店「茨谷園」を出店。東京ではタピオカブームも下火になってしまったが、茨城とは時差があるからまだ平気(?)。
■(※5)茨城ダッシュ
信号が青に変わるやいなや、対向車に先んじて右折する高度な運転テクニック。茨城の交通マナーの悪さを象徴する言葉としてたびたびニュースなどにも登場する。マンガで紹介したように、片側一車線道路で右折車を先に行かせる「善意のマナー」だったが、しだいに危険運転としての色合いが濃くなってきてしまった。
ちなみに全国には、伊予の早曲がり、名古屋走り、松本走り、山梨ルール、阿波の黄走りなど、さまざまなご当地危険運転が存在するらしい(それぞれの意味を知りたい人はググってね)。まあ、そんなことで競いたくはないが……。
■(※6)トラクター
渋滞などしそうもない道路が混んでいる場合、普通は「工事か事故だろう」と考えるものだが、茨城ではもうひとつ原因が考えられる。それは「トラクター渋滞」だ。見分け方は簡単。道路に泥が落ちていたら、まずトラクター渋滞と思って間違いない。
トラクターは自宅と近所の畑を行き来するだけなので、少々詰まっても寛大な心で許してあげてほしい。なんせ茨城は首都圏のみなさんに食料を提供するという重要な役割を担っている関東最大の農業県なのだから。
米や野菜や果物がなかったら、困んのはおめーらだかんな!
■(※7)自動車保有台数
茨城県民が100人いれば、69人くらいが自動車を持っている計算になる(2019年、自動車検査登録情報協会調べ)。マンガのとおり茨城県は2位で、1位は群馬県だが、人口を無視した単純な保有台数では茨城のほうがずっと上だ。大人はひとり1台、クルマを持っているのが常識で、農家ならば軽トラもプラスされるため、家によっては家族の人数よりクルマのほうが多いなんてこともある。別に豪農でもセレブでもなくってよ。
てゆーか、電車が走っていない地域のほうが圧倒的に多いので、クルマがないと生活がままならないのだ。仕事にも行けないし、デートだってできやしない。
東京ではカーシェアだとかいって、クルマを持たないのが流行だそうだが、首都圏直下地震などの有事に、遠くに逃げなければならないときは、どうすんだっぺ? うちの軽トラ貸してやっぺが? ここまでたどり着ければの話だけど。
■(※8)自動車盗難件数
「茨城県が連続1位」といえば、「また魅力度最下位のこと!?」とぶち切れる人もいそうだが、それはたかだか7年連続。しか~し、12年も続けて1位を守っていることがある。「自動車盗難件数」だ。人口10万人当たりの発生件数は1491(警察庁「犯罪統計」)。栃木の408(7位)、群馬の260(8位)とはレベルが違うのである(号泣)。
これは、盗んだクルマを改造・解体する違法業者が跋扈していること、港があって輸出に都合がいいことなどが背景となっているようだ。
なんにしても不名誉な記録なので、一刻も早く五月やダイゴたちに対策を講じてもらいたい。
■(※9)北海道のコンビニ
北海道でコンビニといえば「セイコーマート」。道内ではセブン‐イレブンより数が多く、「セコマ」の愛称と鳥っぽいロゴマークで親しまれている。そのセコマが、道外ではなぜか茨城と埼玉にだけ存在する。もともと酒卸から始まった同社だが、道外の酒卸業者から「ノウハウを提供してほしい」と依頼され、エリアフランチャイズ契約を結んだことがきっかけだ(現在はセコマグループの一員)。ちなみにロゴマークは、ハトじゃねーど!フェニックスだっぺよ(汗)。
品揃えは、たとえば「しょぼろ納豆」や米菓など茨城の地域性を意識しているところもあるが、セコマ自慢のプライベートブランドは、ほぼ北海道と同じものをラインナップ。とくに「Secoma北海道メロンソフト」(本体価格210円)は、私もお気に入りだ。
店内のキッチンで調理するHOT CHEFも県内の多くの店舗に導入されている。なかでも「HOT CHEF カツ丼」はセコマ全体で売上金額1位、店内で衣をつけて揚げる「HOT CHEF フライドチキン」はセコマ全体で販売数1位を誇るとか。たしかにうまいんだよな~。
埼玉にもあるとはいえ、店舗数は茨城にほうが圧倒的に多い(2019年12月現在、茨城85店、埼玉10店)。いつものコンビニメシに飽きたら、茨城にレッツゴー!
■(※10)メロンといえば茨城
「北海道メロンソフト」をすすめておいてアレだが、五月も言っているようにメロンといえば北海道よりも茨城なのである。日本一の産地であるとともに、約25%の全国シェアを誇っている。
作られている品種はアンデス、クインシーなど多岐にわたるが、やはり私としては自分と同じ名前を冠したオリジナル品種「イバラキング」を強く推したい。ジューシーでなめっこい口当たりがこでらんめ~(=たまらない)。
たまにメロンから名前を取ったと勘違いされるが、逆だよ、逆! 知事からの直接の指示で、私の元へ県庁の方が相談に来たんだかんねっ。
■(※11)茨城空港
日本初のLCC(ローコストキャリア)対応空港として2010年に開港。開港時には「国内定期便が一便もない日本初の空港」としても話題にのぼったが、不人気のフリをしてPRに利用する作戦であったことはいうまでもない。
現在の定期便は、国内線が札幌(2往復)、神戸(3往復)、福岡、那覇の4路線。国際線は上海(週4便)、西安(週4便)、長春(週3便)、福州(週3便)、南京(週2便)、台北(週2便)の6路線(準定期便を含む)となっている。
徹底的にコストを抑えたコンパクト仕様のため、飛行機の乗降にかかる時間が短く、手荷物の運搬も楽々。羽田や成田なら数千円以上かかるうえに、ターミナルまで延々と歩かなければならない駐車場も、茨城空港ならタダだしターミナルはすぐそこだ。
さらに、東京駅からのバス運賃は破格の500円! 所要時間こそ90分だが、羽田や成田へ行くのに電車を乗り継いで搭乗するまでの時間を考えると、あまり差はないだろう。
こうしたメリットのために、首都圏第3の空港としてじわじわ人気を集めている。あくまで「じわじわ」であるが……。
■(※12)つくばエクスプレス延伸計画
じわじわ存在感を増しているといっても、やはり空港が鉄道とつながっていないのは痛い。というわけで、県が策定した『茨城県総合計画「新しい茨城」への挑戦』では、2050年頃の姿として、つくばエクスプレス(TX)を空港や水戸まで伸ばす構想を描いている。
「ええっ、30年後かよ!」と思った人はちょっと待ってほしい。2018年には小美玉市議会議長を会長として「TX茨城空港延伸議会期成同盟会」が発足。2019年9月には大井川和彦知事に調査・研究の早期着手を求める要望書を提出した。
だが、このところ聞こえてくるのはTXの東京駅方面への延伸のみ。どうも茨城の足を引っ張ろうとするナゾの力が働いているようだ。
■(※13)百里飛行場
茨城空港の正式名称は「百里飛行場」。航空自衛隊・百里基地の一部だ。空港の整備は、百里基地にいざというときのために使える第2滑走路をつくるという意味合いもあった。
茨城空港は、じつは観光スポットとして想定外の人気を得ている。というのも、百里基地は首都圏で唯一、戦闘機を保有しており、送迎デッキからその勇姿を見ることができるのだ。当初、送迎デッキのガラスは基地側が見えにくくなっていたが、この人気にあやかって普通のガラスになり、いまでは自衛隊機の離発着の様子がよく見えるようになっている。また、百里基地で年1回、年末近くに行われるイベント「航空祭」には、毎年たくさんの戦闘機ファンが訪れる。
ちなみに茨城空港の近くには「道の駅」ならぬ、「空のえき そ・ら・ら」という施設があるので、もし茨城空港の売店で物足りなかったらぜひ寄ってみてほしい。
だっぺ帝国の逆襲は隔週掲載です。
次回は2月3日(月)に公開予定です。
作者よりひとこと+プロフィール
今回のお題:茨城弁だと思っていなかった茨城弁は?
■漫画:佐藤ダイン(サトウ/ダイン)
「いじやける」でしょうか。「あいつ、まじいじやけんな!」みたいにムカつくとか腹が立つという意味で使っていました。大学生になって県外の人と触れ合うようになり、誰も使ってないのでそういうことなんだと理解しました。いじやけることはあったけど、僕はヤンキーではなかったです。
1984年、茨城県大子町出身。芸術系の大学在学中から漫画誌に投稿を続ける。サラリーマン生活、漫画家のアシスタントを経て、『桃色な片想い』(『月刊!スピリッツ』)でデビュー。
■監修:青木智也(アオキ/トモヤ)
茨城弁だと思っていなかった言葉は「だいじ」ですね。「大丈夫」という意味になります。学生時代、ケガした友人を心配して「だいじ?」と聞いたところ、通じなくて「???」となりました(汗)。まさか茨城弁だったとは……。
1973年、茨城生まれ。WEBサイト「茨城王(イバラキング)」を立ち上げるかたわら、常総ふるさと大使、いばらき統計サポーター、茨城県まちづくりアドバイザーなどとしても活動。
初出:P+D MAGAZINE(2020/01/20)