◎編集者コラム◎ 『お龍のいない夜』風野真知雄

◎編集者コラム◎

『お龍のいない夜』風野真知雄


『お龍のいない夜』編集者コラム

「龍さんを斬らはるつもりどすか?」

 そんなことしたら、あんたの頭にペストルで穴空けてやる。一つやない。指の二本も入るような穴を、三つも四つもな。うちはやると言ったらやる女やで。

 なんとも物騒な台詞ですが、日本を変えた風雲児・坂本龍馬の妻・お龍(りょう)が、龍馬が襲撃される寺田屋事件が起こる日に、新撰組の近藤勇に会ったときに口にする台詞です。頼もしいとしかいいようがありません。そして、その夜、京での薩長同盟の会談を斡旋して、寺田屋旅館に宿泊していた坂本龍馬は、伏見奉行の捕り方30人ほどに囲まれます。たまたま風呂に入っていたお龍が異変に気づきます。風呂から裸のまま2階に駆け上がり龍馬らに異変を知らせたことで、龍馬は間一髪、九死に一生を得ることができました。負傷した龍馬はその後お龍と薩摩に脱出します。お龍と湯治しながらの旅が、「日本初の新婚旅行」と言われているのは有名な話ですね。

 そもそも龍馬は、京都の勤皇の志士の隠れ家で楢崎龍と出会い、惚れ込み、そして、恋文で熱い思いを伝えます。

〈お龍さんといると、楽しいし
妙な気を使わずに済むのだと、合点いたし候。
そんな二人が、よくぞめぐり会ったと
おれは一人、感心している次第にて候。
次に京都へ行ったときには、
なんとしても祝言を交わしたく切に切に思い候。〉

――なんやろ、これ。ずいぶん都合のいい文やと、お龍は呆れてしまいます。が、ついには「清水の舞台から飛び降りまひょ」と二人は祝言をあげます。豪快でいつも冗談を言う龍馬を、慕うお龍。龍馬が書いた恋文が本書には数多く出てきます。

 しかし、翌年京都に戻った龍馬が、近江屋に泊まっていたとき、お龍はそばにいませんでした。もし、あの夜、お龍がいたら……。それこそ、歴史が大きく変わっていたかもしれません。

 龍馬がお龍に送った恋文の中身はどんなものだったのか?そして、龍馬の激動の人生に、お龍はどう絡んでいったのでしょう? 

 230万部突破「耳袋秘帖」シリーズ、140万部突破「妻は、くの一」などの人気シリーズで知られる時代小説家・風野真知雄による、新・龍馬伝の誕生です。乞うご期待!

──『お龍のいない夜』担当者より

お龍のいない夜

『お龍のいない夜』
風野真知雄

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