エッセイ

ハクマン第59回
私は漫画家だが、漫画家とは極力関わらないようにしている。漫画家と関わると会うたびに物が2,3個消えるとか、そういう話ではない。私はそもそも、妬み嫉みを擬人化した存在である。これがソシャゲとかだったら、ヤキモチ焼きの美少女にデザインされるのだろうが、現実は厳しい。
夏川草介『臨床の砦』
コロナ最前線の砦から 本書『臨床の砦』は、コロナ診療の最前線を描いた小説である。最前線といっても、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)が登場するような高度医療機関ではない。呼吸器内科医も感染症専門医もいない、地方都市の小さな感染症指定医療機関が舞台である。
長崎尚志『キャラクター』
十年、二十稿のシナリオから生まれた小説 画力は抜群だが、マンガ家として一本立ちするには何かが欠けている青年——万年アシスタントに甘んじていた彼が、たまたま猟奇殺人事件を目撃してしまう。青年はその犯人をモデルにマンガを描き大ヒットするが、一番応援してくれたファンは、当の殺人鬼だった……!?
若松英輔「光であることば」第4回
なぜ、物を書くようになったのか。若松さんにとっての「言葉」体験とは── 書くことの爆発 幼稚園に通うのが嫌だった。そのころから集団行動が苦手だった。それでもどうにか卒園できたのは、その教育方針がある特殊なものだったからかもしれない。カトリック天使幼稚園という名前のとおりの場所で、教会が併設されていた。
辻堂ホームズ子育て事件簿
2021年4月×日 「赤ちゃん」とはいつまでを指すのか、ふと気になって調べてみた。どうやら正確な定義はないらしい。生後28日未満を新生児、それ以降の0歳児を乳児、1歳から小学校入学前までの子どもを幼児と呼ぶことだけが、母子健康法で決まっている。
劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
 劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(原作は小学館文庫)の福岡公演開幕を記念したスペシャル企画の第2弾は、辻村深月さんの観劇エッセイです。
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 恋とはどんなものかしら。噂によると、心臓のドキドキが抑えられず、頭からそれが離れない。寝ても覚めてもそれのことばかり考えてしまって、やらなきゃいけないことまで手に着かない。息苦しさが募っていって、だけどそれがあることにホッとしている自分もいる。こういう存在に私は心当たりがある。ずばり、「締め切り」だ!
劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
 3月に大盛況のうちに東京公演を終えた劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(原作は小学館文庫)。今日(4/29)の福岡公演開幕を記念し、演劇をこよなく愛する二人の作家が劇団四季の会報誌「ラ・アルプ」に寄稿した観劇エッセイを、2日間に渡って特別公開します!
佐々木裕一 『義士切腹 忠臣蔵の姫 阿久利』
忠臣蔵の執筆は時代小説作家の義務 題名は、ある編集者さんから言われた言葉です。私は広島県三次市で生まれ育ち、幼い頃から時代劇が大好きでした。四十歳を過ぎた頃に、「読む時代劇」をテーマに時代小説を書きはじめました。時々、小説のネタに詰まることもあります。そんな時知人から、「三次にはいい材料がたくさんあるでしょ」と、ヒントをいただきました。  
ハクマン第58回
先日何回か仕事をさせてもらった広告系の会社から「インフルエンサーマーケティングについてリモートヒアリングをさせてくれないか」という依頼があった。「この依頼内容を理解する知能がこちらにない」という理由で断ろうかと思ったが、世話にはなっているし、次の仕事に繋がるかもしれない。
遠田潤子『緑陰深きところ』
二人の旅が皆様の心に残りますように。 高校生の頃、文化祭で有志が上映した「真夜中のカーボーイ」を観ました。ダスティン・ホフマンとジョン・ボイト演じる、ダメ男二人の友情を描いたロードムービーの傑作です。私は映画に没入し、ラストにはボロ泣きしました。映画を観てあんなに泣いたのは「砂の器」以来です。
◇自著を語る◇ 夢枕 獏 『ぐん太』
『ぐん太のこと』 『ぐん太』は、作家になってから、三十五年あまり、ずっと心の中で温めてきた物語です。いつか、絵本というかたちで世に出したいと思い続けてきました。そもそものことで言えば、五十年ほど前、二十歳の大学生の時に、一冊の絵本と出会ったのがきっかけです。タイトルは『八郎』。斎藤隆介作、滝平二郎画の、素晴らしい絵本です。
思い出の味 ◈ 大沼紀子
 四十歳を過ぎたあたりから、時おり無性に五平餅を食べたいと思うようになった。五平餅というのは中部地方の山間部に伝わる郷土料理だ。中部地方の山間部は広い。そのため五平餅は、地域ごとに少しずつ姿を変える。草鞋型の胡麻だれや、円形の味噌だれ、団子型の胡桃だれ、なんてのもある。
ハクマン57回
今年になってから、毎月本を出しているような気がするが、本当に毎月出ており、なんだったらひと月に2冊出てるし、さらに今月も出る。おそらく買う方も疲れていると思うが、俺が一番疲れているのだから、我慢して最後まで買って欲しい。
辻堂ホームズ子育て事件簿
2021年3月×日 「子育てエッセイの依頼とか、来ないんですか?」2020年2月。産後2週間健診で、助産師さんから突如、そんなことを言われた。私が出産したのは規模がそこそこ大きい病院で…
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
昔からジェットコースターが苦手だった。高いところから急降下する時の、あのふわっとする感じが好きじゃない。でも、屋内のジェットコースターは好きだ。「武田の乗れるやつと乗れないやつの基準ってなんなん?」と友人に聞かれた時には、「落ちた時に死にそうなやつは乗れない」と答えた。
東川篤哉『新 謎解きはディナーのあとで』
コロナ禍はミステリではありません このたび『新 謎解きはディナーのあとで』が刊行の運びとなりました。執筆期間は一昨年の終盤から今年の正月まで。したがって五本収録された短編のうち四本までが、昨年春以降のコロナ禍において執筆されたものとなります...
関口英子『戻ってきた娘』
岩に咲く一輪の花 「13歳のとき、もう一人の母親のことはわたしの記憶になかった。」という一文から始まるこの小説、10行にも満たない第1章で、早くも読者を物語の世界に引きずり込む魔力を持っている。いったいこの少女になにが起こっているのか。なぜ会った記憶もない実の母親の許に戻されることになったのか。