ハクマン　部屋と締切（デッドエンド）と私　第115回

---

ちなみに今のところ「復讐系」「ざまあ系」は読めていない。
この二つは日本書紀の時代から一度たりとも凋落したことがない人気ジャンルだが、最近特に人気な気がする。
復讐と言っても忠臣蔵のように「婚約破棄されたので腹におダイナマイトを巻いて婚約者と間女もろとも爆死しますわよ」みたいな、特攻では読者が納得しない。

主人公は幸せになり悪者は没落するという「サクセス」と「リベンジ」を両立させているのが、現代人が求める由緒正しき復讐系の作法だ。

これこそ、自分のストレスに敏感で他人のストレスに無痛な私向けのジャンルのように思えるかもしれないし、確かにそうなのだが、今は現代の上質な復讐系に堪え得る体力がない。

復讐という大空に高く羽ばたき、両手を広げて「ざまあ！」と叫ぶには、まず助走としてしゃがむ必要があるのだ。

復讐ものには、まず復讐相手がどれだけ邪悪で主人公がそいつにどれほど苦渋を舐めさせられたかを描くパートが不可欠なのである。
ここがしっかり描かれていないと、そんなに悪いことをしていない人が何故か国外追放され奴隷商人に売り飛ばされるなど、世の不条理を描いた社会派作品になってしまうのだ。

逆にここが胸クソであればあるほど復讐に対する期待度が上がり、読者も「こいつが地獄に堕ちるところを見届けなければ」と課金が止まらない。

しかし、もはやこの胸クソパートに耐えられる精神力を持っておらず、ジャンプの前のしゃがみで膝の皿が破壊され、担架で運ばれる人間が一定数いるのだ。

また、上書き保存機能の老朽化により、最後まで読んでも、胸クソがざまあで上書きされず、永遠に別フォルダ保存されてしまい、何故か胸クソフォルダの方を良く開いてしまったりするのだ。

今は復讐系は数も多いしクオリティも高い。寝食を忘れて復讐まとめを読んでいた若いころの自分だったら、まさにこの世はでっかい宝島だが、今それ系の作品を全部読もうと思ったら普通に破産すると思うので、逆に今読めなくなっていて良かったのかもしれない。

（つづく）
次回更新予定日 2023-09-25

• 1
• 2
• 3