ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第113回

「ハクマン」第113回
ザファを観に行ってきた。
原作を読んでいたころの
私の話をしたいと思う。

今まさに映画「THE FIRST SLAM  DUNK」を見に行って帰ってきたところである。
見た人は大体絶賛しているし、昨日見たとXでつぶやいていた奴が今日また見に行っていたりとリピ率が異常なのでさぞ良い映画なのだろう。

しかし、同じ映画を常軌を逸した回数見ている、という意味では私だって実写デビルマンを何回見たか覚えていないし、何度も見るほど実写デビルマンは良いのかと問われれば「残念ながら」という表情で首を振る。

よって「他人が何回も見ている」というのは全く判断基準にならないので、自分で1回見に行ってみることにした。

結果から言うと凄く良かったし、すごく悪いのに何回も見てしまう実写デビルマンの異常性を再認識できたのも良かった。
そして改めて原作となるSLAM DUNKは名作であり、原作を読んでいた時の気持ちを思い出し、私もこれから頑張って漫画を描こうと思った。

だが、これから寝て起きたらすでに思っていないので今これを書いている
これは滅多にない私の前向きな気持ちが残した遺言だ。誠に惜しい奴を亡くした。

そして追悼のために、原作のSLAM DUNKを読んでいたころの話をしたいと思う。
映画が与えてくれた未来に進むパワーを何故か後ろを振り返るのに使ってしまうのがこの俺だ。

SLAM DUNKことスラダンを読んでいたころ私は中学生だった
ちなみに 「THE FIRST SLAM  DUNK」は「ザファ」と略すことに度肝を抜かれている、本題を無視してナンバーのみを略すセンスはさすが令和だ。
私は今年ドラゴンクエストモンスターズ3を買おうかと思っているが、店頭で「ドラクエ」などと昭和丸出しの言い方はせず「スリを出せ」の一点張りで行こうと思う。

しかし、それでも出てきそうなのがドラクエというビッグタイトルのすごいところだ、SLAM  DUNKがザファで通じるのもおそらくSLAM  DUNKだからだろう。
つまり私が「実写」と言い出したらデビルマンのことだと思って欲しい。あれも原作は偉大だったのだからその資格がある。

スラダンを読んでいたので、大体同時期に連載されていた、幽遊白書や、その後のるろうに剣心も読んでいたし、ギャグマンガと言えばマサルさんである。
今は超人気作を見ただけでえずくようになってしまったが、この時は素直に読めていた。

だがこの後私はめっきり漫画を読まなくなってしまった。
別媒体で「他人様の名作漫画のキャラについて語る」という、もう他人のふんどしを締めないと土俵以前に外にも出られなくなった全裸の人がやる仕事をしているのだが、この仕事には協力者がおり、毎回担当含めて3人で次何をテーマにするか会議を開いている。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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