ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第169回

打ち切りだったことや、最終巻の部数が2800部で「ほう、そういう刻み方もできるのか」というしなくていい発見があったことは積極的に発信しないのに対し、三桁万部突破やメディア化の情報はここぞとばかり流れてくる。
つまり、探している宝に対し、埋まっている地雷数があまりにも多く、それを踏まずにインディ・ジョーンズが成功することはまずないため、積極的には探しにはいけないという状況だったのだ。
しかし、AIに検索させれば、地雷を避け宝だけを持ち帰れるのではないだろうか。これはガス検知にカナリアを使わなくてよくなって以来の文明の勝利である。
早速AIに「打ち切りとか不人気で苦労している漫画家を探してきてくれ」という、AIにしか言えない指示を出してみた。
するとAIは「鈴木央」という名前を出してきた。
もうこの時点で、私の周りを飛んでいたカナリアは全員逃げたのだが、何とか踏みとどまり「もしかしたら『七つの大罪』とか描いていない方の央先生がいるのかもしれない」と読み進めたところ「ジャンプで『ライジングインパクト』を描いてた時、一度打ち切りになったが、読者の要望で再開したそうです。いやあ苦労してますね」という、一体何年前のことかわからないことを言いだした。
それと同じ文脈でAIは『食戟のソーマ』を描いた先生の話もお気に入りで何度も「ありましたよ!」と持ってくる。
現在成功している作家の昔の苦労話ではなく、インザナウ苦境にいる作家を見つけてこいと指示を出し直したところ「AIはXとかの投稿を直接見ることはできない」というかなり致命的なことを言いだし、さらに「そもそもそんな弱音をリアルタイムで吐く奴自体が少ないため、出ていないものは探せない」とまで言い出した。
これは、大きな悲報であり、同時に小さな朗報だ。
AIが台頭してきてから、多くの人が大なり小なり「自分の仕事がAIに奪われるのでは」と危機感を感じていると思う。
しかしAIはまだそこまで進化はしていない。未だに機械化不可能で「手摘み」しかできない農作物が多くあるように、漫画家の失敗も今のところ人間自ら地雷原に入り、2、3回爆死しながら探すしかないのである。
つまり漫画家の仕事はAIにとってかわられるかもしれないが、本業である不幸ソムリエの地位はしばらく安泰ということだ。
しかし、後継者がいないのも困る。AIはもっと人間の機微を学び、こちらが求めている絶妙な不幸を拾えるようになってほしい。

(つづく)
次回更新予定日 2026-11-11
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